マネーボイス メニュー

ホテル業界「完全終了」へのカウントダウン。稼働30%割れ 買い手消滅で窮地=澤田聖陽

7月の国内ホテル稼働率は28.9%との調査結果が出ました。これでも6月からは4.9ポイント改善しましたが、3割弱の稼働率では採算が合うはずがありません。今後の不動産業界全体の展望とともに、苦境に立つホテル・宿泊施設の現状をお伝えします。(『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』澤田聖陽)

※9月7日(月) 19:30よりLIVE配信開催!「『投資に勝つ』ための最新ニュース解説
投資に勝つにはまず第一に情報分析。「投資に勝つ」という視点から日常のニュースをどのように読むべきかを、この記事の著者で、元証券会社社長で現在も投資の現場の最前線にいる澤田聖陽氏が解説します。視聴方法はこちらから。

※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2020年8月25日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

ホテル・宿泊施設は壊滅的

株価と地価(不動産価格)はマクロ経済の体温だと思います。株価は経済の先行指標、地価は遅行指標だと言われています。

私は仕事でファンドの組成や、ファンド関連のコンサルティングを行っており、不動産に関わる仕事が比較的多い状況です。

今回は、私が現場で見聞きしている情報をもとに、不動産市場が今どうなっているのか、これから不動産がどう動いていくかについて、私の考えをお伝えしたいと思います。

コロナの影響は不動産市場にも大きく影響しています。

例外的なアセットもありますが、不動産を用途別に大きく分けると、以下のとおりに分けられると思います。

1. レジデンス(住居)※さらにマンション、アパート、戸建てに分けられる
2. オフィス
3. ホテル、宿泊施設
4. 商業施設
5. 物流施設

ご存じのとおり、この中で一番コロナの影響を受けているのは、ホテル、宿泊施設です。

ここ5年はインバウンドの需要が急増しており、ホテルの建設ラッシュでした。それが今はコロナでインバウンド需要は瞬間蒸発し、ほぼゼロに近い状態になっています。

稼働率は3割以下に

ホテル専門の英調査会社STRが発表した7月の国内ホテル稼働率は「28.9%」という数字が出ています。これでも6月からは4.9ポイント上昇しているのですが、3割弱の稼働率では、当然、採算が合うはずがありません。

ホテル運営の稼働率を表す経営指標で、ADR(客室平均単価)とRevPAR(販売可能客室1日1室当たりの売上高)という指数があります。

ADRは、単純に販売した客室の売上合計を販売した客室数で割ったもの。
RevPARは、販売できた客室の売上合計を販売可能であった客室数で割ったものです。

ホテルについては、所有者兼オペレーターというケースもありますが、一般的には所有者とホテルオペレーターとが分かれる形が多いと思います。

投資家である不動産所有者は、ホテルオペレーターから毎月決められた賃料を受け取ります。

この賃料が、大阪や京都の新築ホテルでは、コロナ前の最盛期で、利回りベースでグロス3~4%台の水準になっていました。

それでもREITや私募ファンド、事業会社等が購入していました。

オペレーター側は、運営開始後の稼働率を考えて不動産所有者に借り上げ賃料を提案します。おそらく稼働率については場所や内容にもよりますが、60~75%の稼働率で採算が合うような賃料を提示していると思います。

今の稼働率がおそらく20~30%程度になってしまっているので、オペレーターとしてはまったく採算が合わない状況なわけです(採算が合わないから休業しているところもあります)。

Next: オーナーもホテル運用者も同時に疲弊。まもなく耐えられなくなる?



苦境に立つ不動産オーナー

ちなみに借り上げ賃料は、永久にどんなことがあってもその賃料を払い続けるというものでもなく(仮にそんな約束をしたとしても払えないものは払えないので)、今のように極端に状況が悪くなれば当然、オペレーターから不動産オーナーに賃料の減免、支払い猶予等の依頼がきます。

おそらくコロナショック後、オペレーターからそのような依頼が相次いでいると思います。

不動産オーナー側も代わりに賃料を保証してくれるオペレーターが見つかる状況でもないので、飲まざるを得ません。

しかしながら、不動産オーナー側も自己資金で不動産を買っているというオーナーは比較的少なく、当然、銀行借り入れを行って買っています。

オペレーターからの賃料が減少したり、止まってしまったりすると、銀行借り入れの返済ができないということになってしまいます。

銀行もずっとは待ってくれない

銀行は今の状況でトリガーを引くのは社会的な批判を招きかねないので、不動産オーナーの返済が遅れたからといって、すぐに強硬なことはしないでしょう。

数か月の期間でコロナの影響が終息して、通常の稼働率に戻ったうえで、オペレーターからの賃料収入が元の水準に戻ればよいのですが、これが年単位になりますと銀行側もずっと待てるのかという問題が出てきます(銀行自体の決算にも響いてきますので)。

タイムリミットが迫っている

ホテルの状況は4月、5月に比べると少し改善はしていますが、今のところコロナ前の稼働水準に戻る兆しはまったくありません。

今後ワクチンが開発されるでしょうから、ワクチンが普及した後は国内需要やインバウンドも徐々に回復してきて、どこかでは元の稼働水準に戻るのかもしれません。

問題はそこまでオペレーターや不動産オーナーが持つのかという点です。銀行もいつまでも返済猶予というわけにもいかないでしょう。

Next: ホテルの売却案件が続々。今までの4割の価格でも売れない現状



ホテル業界はこの先2〜3年は厳しい

足元の状況としては、ホテルの売却案件は結構出ていますが、価格は当初考えられていた価格の半値八掛け(40%)でも買い手がなかなか見つからないという状況です。

どのオペレーターも事業の状況が厳しく、まともな条件でオペレーターを引き受けてくれるところがなかなか見つからない状況なのです。

ホテルアセットについては、今は手が出しにくい状況だと思います。

それでは半年後に手が出せる状況になっているのかというと、結論は分かりませんが、個人的な考えではおそらく厳しいのではないかと思います。

ビジネスホテルは、ホテルの中でも比較的固いと言われてきましたが、テレワークの普及や無駄な出張が減ることにより、今後は供給過剰な状況になると思います。

シティホテルやリゾートホテルについては、観光需要が戻ってくるにはまだ時間が掛かりそうですし、インバウンド需要が元に戻るのにも少なくとも2~3年の時間必要でしょう。

国内需要を当てにしたホテルや旅館は比較的早く戻ってくるかもしれません。

まだまだ全体を見ると厳しい状況なのでしょうが、熱海や箱根の一部の旅館は比較的予約が埋まっている状況だとよく聞きます(Go Toトラベルキャンペーンの効果も当初考えられていたより良い数字が出ているようですし)。

ホテルアセットについては、総論は当面は私が考える厳しいというのが結論になります。次回のメルマガでは、レジデンスやオフィス等の、その他のアセットについて記載したいと思います。

続きはご購読ください。初月無料です

【関連】ウィズコロナで「7割経済」へ。解雇規制に縛られた日本経済に短期V字回復は不可能=澤田聖陽

【関連】レナウン、コロナ倒産ではない? 中国企業との取引に潜むリスクと、破綻の真相=澤田聖陽

【関連】10万円給付金は「パーッと使う」が大正解!ただし消費税おまえはダメだ=澤田聖陽

<初月無料購読ですぐ読める! 8月配信済みバックナンバー>

※2020年8月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。

2020年8月配信分
  • Vol.039 「不動産はこれからどう動くか?(前編)」(8/25)
  • Vol.038「2020年4~6月期の日本のGDP速報値 年率換算27.8%減」他(8/18)
  • Vol.037「トランプ大統領、大統領令でTikTokとWeChatの取引を禁止」他(8/11)
  • Vol.036「TikTok(バイトダンス)のアメリカ事業の禁止及びマイクロソフトへの売却について」(8/4)

いますぐ初月無料購読!


※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2020年8月25日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込880円)。

2020年7月配信分
  • Vol.035 ドラマ「半沢直樹」を観て 日本の金融システムの何が問題なのか?(後編)他(7/28)
  • Vol.034 ドラマ「半沢直樹」を観て 日本の金融システムの何が問題なのか?(前編)(7/21)
  • Vol.033「ファミリーマート伊藤忠商事の完全子会社に」「自社株買い 強まる潮流」(7/14)
  • Vol.032 (2回連載企画)アメリカ大統領選挙の仕組みを徹底解説及び予想(後編)他(7/7)

2020年7月のバックナンバーを購入する

2020年6月配信分
  • Vol.031(2回連載企画)アメリカ大統領選挙の仕組みを徹底解説及び予想(前編)他(6/30)
  • Vol.030 (5回連載企画)緊急事態宣言解除後の世界 第5回「分断された世界 貧富の差の拡大」他(6/23)
  • Vol.029 「コロナ後の世界情勢 米中激突 5G時代 半導体の行方」他(6/16)
  • Vol.028 緊急事態宣言解除後の世界 第3回「DXは人間の幸福度を上げるのか?」他(6/9)
  • Vol.027(5回連載企画)緊急事態宣言解除後の世界 第2回「働き方の変化」他(6/2)

2020年6月のバックナンバーを購入する

2020年5月配信分
  • Vol.026 (5回連載企画)緊急事態宣言解除後の世界 第1回 「7割経済」他(5/26)
  • Vol.025 「レナウン、民事再生手続き開始 その真相は?」「ソフトバンクグループ、2020年3月期連結決算について」(5/19)
  • Vol.024 「緊急事態宣言解除後、どうなるか?」(5/12)

2020年5月のバックナンバーを購入する

2020年4月配信分
  • Vol.023(号外)緊急事態宣言延長へ 1カ月前後延ばす見通し(4月30日)(4/30)
  • Vol.022 「(数字で検証)インバウンド消費の正体」「貸倒引当金、判断柔軟に 会計士協会、銀行監査で方針」他(4/28)
  • Vol.021 (資金繰り考察)資金繰り余力、各種指標の見方 他(4/21)
  • Vol.020 「(デジャヴ)1600億年に一度の発生確率」他(4/14)
  • Vol.019 「日本政府による事業総額108兆円(財政支出39兆円)の緊急経済対策について」他(4/7)
  • Vol.018(号外)「6日にも緊急事態宣言の準備入り表明見通し」(4/6)

2020年4月のバックナンバーを購入する

2020年3月配信分
  • Vol.017「東京ロックダウン(都市封鎖)について」「東芝機械、買収防衛策を可決 村上氏側TOB撤回」(3/31)
  • Vol.016 「コロナウイルスショックの影響と各国の対応まとめ(3月23日現在)」「ボーイングの危機について」他(3/24)
  • Vol.015〈徹底解説〉コロナウイルスショックと今後の経済、マーケットへの影響(3/17)
  • Vol.014「コロナウイルスの影響、今週の動き、所感」「アメリカ大統領選まとめ スーパー・チューズデーの結果及び分析」他(3/10)
  • Vol.013「コロナウイルスショック、今後の影響を徹底的に解説・予想」「アメリカ大統領選挙、民主党予備選について」(3/3)

いますぐ初月無料購読!

2020年2月配信分
  • Vol.012「2019年10~12月期のGDP、5四半世紀ぶりマイナスに」「モルガン・スタンレー、Eトレード買収他」(2/25)
  • Vol.011「ソフトバンクグループ、10~12月期連結決算発表等解説」「民主党ニューハンプシャー州予備選について」(2/18)
  • 2月11日発送分の修正版の発送及びお詫び(2/12)
  • Vol.010「民主アイオワ州党員集会について」「公取委、楽天に立ち入り検査」等(2/11)
  • Vol.009「新型コロナウイルスの感染拡大について」「ブラックストーン・グループによる国内最大の不動産投資について」等(2/4)

2020年2月のバックナンバーを購入する

image by:Blue Planet Studio / Shutterstock.com

元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』(2020年8月25日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」

[月額880円(税込) 毎週火曜日(祝祭日・年末年始を除く)]
投資に勝つにはまず第一に情報分析。「投資に勝つ」という視点から日常のニュースをどのように読むべきか。元証券会社社長で、現在も投資の現場の最前線にいる筆者の視点で解説します。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。