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またも「タピオカが流行ると景気も終盤」が的中。あの熱狂はどこへ?=栫井駿介

日本で一大ブームとなった「タピオカ」ですが、あっという間に衰退し、現在では店舗の閉店ラッシュが続いています。株価の値動きもまさにそれと同じ。ブームの終わりを見極めることが重要です。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

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プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

上昇の勢いを失いつつある相場

新型コロナショック後、果てしない上昇を続けてきた株価ですが、いよいよ勢いを失ってきた印象を受けます。

NASDAQ 日足(SBI証券提供)

上昇を牽引してきた要因のひとつである金融緩和ですが、いつしかゼロ金利が当たり前になってしまい、FRBや日銀が金融緩和継続の方向性を示しても相場を押し上げる力はありません。

一方、ハイテク株はどうでしょうか。テレワークや「非接触」のメリットから期待が先行して上昇を続けてきましたが、街を見るといつの間にか当たり前のように人が繰り出しています。そのうち「コロナ前」に戻ると考えると、これ以上の期待をかけるのも難しくなってくるのではないでしょうか。

「タピオカ」と株価の関係

ここから株価を押し上げるとしたら、具体的な材料よりも、人々の熱狂です。アメリカでは「ロビンフッダー」と呼ばれる新規参入の個人投資家が盛んに取引を行っています。日本でも似たような状況となっており、小型株で構成されるマザーズ指数はとどまるところのない上昇を続けます。

マザーズ指数 日足(SBI証券提供)

熱狂は時に信じられないほどの株価上昇をもたらします。日本のバブル景気も、2000年前後のITバブルも、根底にあるのは人々の熱狂です。

しかし、熱狂は冷めるのも早いのが特徴です。時が過ぎ去ってしまえば「あれは何だったのか?」と訝るほど、急速にしぼんでいきます。昨年あれほど盛り上がったタピオカ屋も、今では閉店ラッシュを迎えているようです。
※参考:タピオカは「もう映えない」 聖地・原宿で閉店ラッシュ – 朝日新聞(2020年9月18日配信)

熱狂を萎ませるものは何でしょうか。ひとつは、新規性の喪失でしょう。人は新しいものが好きですから、目新しいものに飛びつきます。人が群がっていると、それを見ようとさらに多くの人が訪れ、我先にと真似をします。しかし、多くの人が手にした時「目新しさ」はなくなり、人々の関心は離れていくのです。

最初は物珍しさでインスタグラムにアップされたタピオカも、今となっては「まだやってるの?」という感じになります。インスタにおける栄枯盛衰は、世の中の流れを見るのに適しているかもしれませせん。

もうひとつは、現実に引き戻されることです。ブームの時は「一生タピオカ飲んでいたい」と言う人すら見られましたが、実際に飲んでみるとそんなに大したことはありません。美味しいのはミルクティーであって、タピオカは単なる芋の塊です。高カロリーで、ダイエットにも向きません。

株式市場では、未曾有の金融緩和やハイテクブームが上昇を牽引してきましたが、これから行われるのは決算発表という「現実」です。ここで「夢」との乖離が調整されることになるでしょう。

ちなみに、「タピオカが流行ると景気も終盤」という数十年単位のアノマリー(偶然)がありますが、今回も見事に的中したのは興味深いところです。

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上がりすぎた景気敏感株は相場をどう動かすか

最近の相場の特徴として、景気悪化局面ではどう考えても業績が下がる銘柄も、相場全体に引きずられて上がっている点があります。景気連動性の高い日経平均株価が「コロナ前」を回復したことなどはその最たる例です。

これからの業績発表では、これらの銘柄から現実に引き戻されることになります。上半期が終了し、「未定」となっていた通期予想が発表され、利益の低下により日経平均PERはグンと上昇するでしょう。それらの銘柄の株価は下がる可能性が高まります。

出典:投資の森

気になるのは、それがハイテク株へも波及するかどうかということです。多くの場合、どんな銘柄も相場全体が下がればそれに逆らうことはできませんが、今回はどうでしょうか。ハイテク株の「現実」が予想を超えてくるのか、それほどでもないのかも焦点となります。

コロナ経済の特徴は、晴天からいきなり土砂降りになったことです。通常の景気後退では、徐々にしとしと降りはじめ、次第に土砂降りになりますから、経済指標でも確認しやすいのですが、今回はそうもいきません。

雨はまだ止んでいません。その水量が計測できるのはまだまだこれからということになります。

100年前の世界恐慌が発生したのは1929年と言われますが、景気の底は3年後の1932年でした。今は小康状態でも、再び大雨が降り出す可能性も考慮しなければなりません。

景況感を最も敏感に感じ取れるのは、GDP速報ではなく街角の風景です。みなさんも景気がどんな状況にあるか、街に出てご自身の目で確かめてみることをおすすめいたします。

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image by:aslysun / Shutterstock.com

バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2020年9月20日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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