中国経済は「模倣」と「膨大な人口」を使い、この40年で驚くほど大きくなりました。この両輪が使えなくなる近未来、中国はどうなっていくのでしょうか?(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)
株式会社銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。
なぜ40年でこんなに大きくなった?
なぜ中国はこんなに大きな国になったんだろう……僕はずっと前から、こんなことをよく考えてきました。
思えば僕が社会人になりたての頃、中国はホントに小さな国でした。もちろん面積ではなく、経済や国際政治でのお話です。
作れるものといえば、粗悪な万年筆やボールペン。それに服や家具などしかなかった記憶があります。
そんな小さな中国が、わずか40年ほどで世界の覇権争いに参加する国になるなんて、予想できた人はいったいどれほどいたでしょう。
なぜ中国は短期間でこれほど大きくなれたのでしょう。
「パクリ」と「人口」のダブルエンジン
大きく考えて僕は2つほど理由があると思います。
1つ目は「模倣」、悪く言えばパクリです。
国家をあげて模倣に励んだ結果、短期間のうちに日本やアメリカの技術や知見を移植できたことが大きかったと思います。それも民間企業の努力まかせにせず、それを国策としてやったところが大きかったと思います。
でも、僕は模倣が悪いとは思いません。その昔の日本もそうやって短期間に技術を蓄積しましたし、近世に入って急速にヨーロッパの国々が国力を高めたのも、その源泉をたどればお互いの模倣に行き着きます。
中国躍進の2つ目の理由は、「人間の多さ」による消費パワーの有効活用だと思います。
今世紀に入って中国はしばしば他国に対し、食料の輸入停止を行うことで圧力をかけてきました。記憶に新しいところでは南シナ海問題でいさかいを起こした、フィリピンに対する事実上のバナナ輸入停止です。
現在進行形で起きている、オーストラリアに対する石炭輸入停止も同様の事例として
挙げることができます。
そういえばある方のノーベル賞受賞にケチをつけ、ノルウェー産サーモンの輸入を停止したこともありました。
このような露骨な嫌がらせだけではありません、ヨーロッパも最大の輸出先である中国の顔色を見るのに忙しかった時期がありますし、かつてはアメリカの親中派も、同様でした。
ただただ多くの人間がいてたくさん消費するというだけですが、それをうまく利用することによって、中国は存在感を高めてきた面があるのではないでしょうか。
もし上記の見方が間違っていないとすれば、中国の近未来はいったいどのようなものになるのでしょう。
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もう「模倣」は通じない
まずパクリ問題です。
模倣によって先進国の技術を自国に移植するのはさほど難しくはありませんが、いったん追いついてしまえばもうおしまいで、それ以上の模倣はできません。
これから先は、中国の人たちが本来持っている能力に依存せざるをえないでしょう。
仮に中国人が高い潜在力をもっていて、それを先端技術の開発に活かせたとしても、今までの模倣時代に比べて速度は緩やかになるはずです。
しかもアメリカとその友好国による技術移転の禁止が本格化しており、この点でも中国は難しい時代を迎えると思います。
急激に「少子高齢化」社会へ
では、人口のほうはどうでしょう。
国連は今年、中国人の年齢の中央値が38.4歳になり、すでにアメリカを上回ると推計しています(日本経済新聞2020年10月16日付より)。
過去行ってきた「一人っ子政策」の影響もあり、今後もこの少子高齢化傾向は進むとの考えられてます。なかには2100年の人口を3.5〜4.5億人と予想する研究者も出てきました(同上)。
まあ一足飛びに人口5億人割れとはならないでしょうが、今まで同国の影響力拡大を支えてきた人口拡大が止まるだけでも、同国にとっては痛手になるはずです。
中国経済の「逆回転」が始まる
もしこの見方が正しければどうでしょう。
中国にとっては逆回転の始まりです。人口が減っていくので、今までのような消費パワーをてこに、外国に影響力を行使することはできなくなるでしょう。
国内の消費が縮小していきますから、中国の企業は外に出て稼がなくてはなりません。ちょうど今と逆の構図になるでしょう。
いまはまだ「中国製造2025」の看板を掲げ技術立国を目指していますが、それも達成困難でしょう、技術力の停滞が始まれば、世界のおカネを今までのように集めてくることは難しくなるはずです。
おカネが集まらなければ、一帯一路もとん挫することになるでしょう。
中国の停滞は、私たちにとって決して喜ばしいことではありません。それでもこのような近未来はお隣に住む私たちにとって決して悪い世界ではないと思います。
『一緒に歩もう!小富豪への道』(2020年10月16日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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