菅政権はようやく国内観光業支援で無理やり始めた「GoToトラベル」の見直しを検討すると発表しましたが、ここに来て「焼け石に水」で旅行業界を救えていないことが判明。コロナをただ蔓延させただけという状況に見えます。(『今市的視点 IMAICHI POV』今市太郎)
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「GoTo」利用は自己責任?
今年のかなり早い段階から予想されていたように、気温が下がり乾燥が強まる冬季に向けて、新型コロナの感染再拡大が到来するであろうという状況がまさに足元で展開しはじめています。
しかし、菅政権は国内観光業支援で無理やり始めた「GoToトラベル」キャンペーンを中止するつもりはないとしており、医師会が感染との関係を指摘しても影響は一切ないと突っぱねる始末(編注:原稿執筆時点11月20日時点。菅政権は21日、GoToトラベルキャンペーンの運用を一部見直すと発表しました)。
しかも「GoToトラベル」を利用するかどうかは自己責任と言ってのけるわけですから、新型コロナ対応でまたしても菅首相の無能ぶりがさく裂した状況になっています。
国内の日本人宿泊者数はもともと少子高齢化で減少傾向
東京五輪の開催を見込んでいた昨年段階で、いくつもの調査機関が国内の宿泊者数推移と2020年の予測を出しています。
それによると、国内における平均旅行回数が2015年に比べて横ばいだとしても、2020年は(コロナ発生前の試算で)のべ旅行者数は3億200万人程度とされていました。
2015年と比較して1,100万人程度が減少するであろうことは事前段階から予測されており、それを訪日外国人の増加と、東京五輪開催による上乗せで相殺する見込みであったことがわかります。
「GoToトラベル」では旅行業界を救えない
今年の当初の訪日外国人数は、政府目標では4,000万人です。
ですから、新型コロナで事実上の鎖国状態になり東京五輪も開催できない状況では、そもそも宿泊業界、もう少し大きく言えば旅行業界におけるコロナ起因の売上落ち込みを、国内需要の喚起だけではまったく拾い上げることはできないことは明確な状況です。
このキャンペーンは旅行業界から大量献金を受けている自民党議員がむりやり政権に働きかけて実施にこぎつけたのでしょうが、まったくなんの効果もなかったとは言いませんが、しょせん「焼石に水」。
挙句の果てに、もともと可処分所得の大きい富裕層に厚めのインセンティブが集まる始末で、もともと旅行どころではない多くの人々にとってはなんの意味もないプロモーションであったことは否めません。
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訪日外国人と一緒にGDP0.9%が消滅
しかも札幌では前代未聞の感染状況で市民は不要不急の外出を控えるものの、Go Toの観光客は自己責任でマスク一丁つけて市内を闊歩するというのですから、このパラドックス状態は小学生でもおかしいと思うものがあります。
国連世界観光機関発表の世界観光動向によると、2019年の日本の外国人旅行者受入数は日本は3,119万人、訪日外国人の旅行消費額は前年比6.5%増の4兆8,135億円で過去最高を記録しています。
これが1月末の新型コロナ感染拡大でいきなり急ブレーキがかかり、2月以降はほとんど誰も来日していない状況です。
そのため、GDPの0.9%程度が完全に消え去ってしまったわけで、そもそも日本人観光客の利用喚起ではまったく補えないものであることは数字にも明白に表れています。
菅政権があたかもこのキャンペーンが一定の経済効果をもたらしているとするのはフェイク中のフェイク情報と言わざるを得ません。
根本的な感染対策を講じなければ「ロックダウン」が最終手段に
国内では、PCR検査の徹底実施が意味のあることなのか・ないことなのか、延々と不毛な議論が繰り返されています。
その結果、徹底検査が実現しないまま感染の第三波が到来してしまうという体たらくな状況です。
WHOから無視され続けて対策事例としても世界で利用されない「台湾」では、この7か月、完全に感染が抑えられているという現実が存在します。どうしてこうしたベストプラクティスが世界的にシェアされないのか、まったくよくわかりません。
欧州圏は結局、経済回復という視点から早期にロックダウンを解除して市民生活はすぐにもとに戻りかけたように見えましたが、冬が近づけば感染はまったく抑えることができず、春先以上に厳しいロックダウンを余儀なくされています。
米国もここから先は欧州とほぼ似たような状況に陥るであろうことは、ほぼ間違いない状況です。
結局、政権・政府が致死率の低さをいいことに何も手立てを打たないで、経済優先のような政策を打ちだせば、最後にまたやってくるのが「ロックダウン」であることを市民自らよく理解する必要がありそうです。
Next: 緊急事態宣言は避けられない?国民は弱りきっている
緊急事態宣言は避けられない?
年末の飲食シーズンを迎え、東京では飲食業者がなんとか緊急事態宣言による4~5月のような事実上の都市封鎖は回避して欲しいと懇願している様子。
しかしながら、政府の感染対策がない以上、結局はロックダウンは免れないのではないでしょうか。
西村大臣は新型コロナ感染状況を「神のみぞ知る」などと無責任で事実上対策放棄ともとれる発言をしています。
ツイッター上では数日前から「#自民党に殺される」というハッシュタグが爆発的に広がり、菅政権は無理やりそのタグが出ないように消しにかかっているようですが、今回ばかりは国民感情も相当激しい状況に至っていることがわかります。
果たしてこれで政権は本当に維持できるのでしょうか。さすがに国民はそこまで寛容ではないと思いますが。
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『今市的視点 IMAICHI POV』(2020年11月20日号)より抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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