マネーボイス メニュー

なぜ日本のベビーカーは蹴られるのか?冷たい大人が増えた原因と親の心構え=午堂登紀雄

ベビーカーを見るだけで邪魔だと感じたり、クルマの“赤ちゃんが乗ってます”ステッカーに「だから何?」とイライラしたり、子連れ家族や子どもに冷たい大人が増えています。なぜこんな社会になってしまったのか。その原因と、子育て家族にできる対策と心構えを考えます。(『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』午堂登紀雄)

【関連】「もう風俗で働くしかないのか」元AV女優の貧困シングルマザーに私が伝えたこと=午堂登紀雄

※有料メルマガ『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』好評配信中!興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:午堂登紀雄(ごどう ときお)
米国公認会計士(CPA)。1971年生まれ、岡山県出身。中央大学経済学部 国際経済学科卒。株式会社エディビジョン代表取締役。一般社団法人 事業創造支援機構代表理事。

日本で「心の狭い」大人が増えている

最近、近所でもネット上でも、子ども連れの家族に冷たく当たる人たちをよく見かけます。たとえば以下のような発言や行動です。

・ベビーカーに席は譲らない、お前が勝手に産んだ子どもだろ
・クルマの赤ちゃんが乗ってますシールに「だから何?」
・保育園はうるさいから、近所での開設反対
・小学校の行事がうるさい、校庭の砂が舞って洗濯物が汚れる
・公園でのボール遊び禁止、大声禁止
・子どもの写真を印刷した年賀状を送ってくるな、別に興味ない
・新幹線の隣の席に子連れはやめてくれ

このように、子どもに対して冷ややかな意見、子連れや子どもの声にイライラする人たちが増えています。

「子どもは国の未来の宝」のはずが、なぜ日本でこのような意見が多く見られるようになったのでしょうか。そして、今後の日本はどうなってしまうのでしょうか。

今回はこのような環境の中で、どのような心構えで生きていくべきかを考えたいと思います。

世界は子どもに優しい。なのに日本は…

そういえば私も以前、ベビーカーで電車に乗っていたとき、50代くらいのおっさんにベビーカーを蹴られたことがあります。「ベビーカーが足に当たったから」というのがその理由だそうです。「ならそう言えよ!」と怒鳴り返したため、電車内は凍り付きましたが(笑)。

また混雑する駅の構内でベビーカーを押していたとき、20代くらいの若者がすれ違いざまによけようともせず、突進してぶつかってきたことがあります。

さらに前回の記事でもご紹介しましたが、5歳の長男を連れた妻が電車の中で20代くらいの男性に「あいつ、ブツブツ言って、発達障害じゃねーの?」などという言葉を吐かれたことがあります。

一方、私は海外投資をしていることもあり、アジアを中心に多くの国を旅行し、現地の人と交流してきました。フィリピンのセブ島に3か月ほど滞在したこともあります。

そこで感じたのは、どの国の人もみな子どもにはとても優しく、暖かい目で見守ろうとする国民性があることです。他人の赤ちゃんにも笑いかけるし、子どもを優先してくれます。本当に子どもを大切にするんだなあと。

翻って日本。それでネットの記事やSNSを少し検索して見えてきたのは、上記のような子どもに冷ややかな主張をする人には、ある共通項があるということです。

Next: 子どもに冷たい人の共通点は?その原因を考察



子どもに冷たい人の共通点

子連れ家族や子どもに冷たくあたる人には、いくつかの共通項があるようです。

それは(あくまで私の印象ですが)以下などです。

・男性
・独身
・子どもが手を離れている年齢になっているか、すでに巣立っている

特に「ほとんど男性」というのは顕著で、やはり10か月もお腹の中で育んだわけでもないし、痛みに耐えて産んだわけではないし、母乳もあげていないなど、「生まれてくる新しい命」という実感を体感として経験していない分、感情移入(守りたい、愛おしい)がしにくいのだと思います。

ただ、それは世界中の男性すべてに当てはまることです。

日本に蔓延する「他人への無関心」

では、日本人のどういう特質が反映されているのでしょうか。

ひとつの要因として「赤の他人に対する壮絶な無関心さ」が挙げられると思います。

自分のコミュニティの人には思いやりや親切心を持てる一方、自分とは関係ないまったくの他人には、非情なまでの「どうでもいい感」を持つ。電車の中での化粧や飲食という行為も、周囲は人間の形をした風景にしから映らないからでしょう。

半径3メートルの人間関係しか大事にしない・できないようになっているのではないでしょうか。

たとえば、私が幼少の頃、地方の田舎では地域全体で子育てをする環境でした。他人の子も、自分たちのコミュニティを構成する一員という一体感がありました。

異年齢の子どもたちが一緒に遊ぶ光景も普通で、小さい子は近所のお兄ちゃんやお姉ちゃんから学ぶ、自分より小さな子どもたちに教えるというのも当たり前でした。

だからという理由だけではありませんが、多種多様な人との交流によって「他人への許容」「自分とは違う人への尊重」もまだ受け入れる土壌があった。

しかし現代、異年齢が交わるのは会社ぐらいで、個々人のコミュニティは非常に狭く限定的になっているような印象があります。

若者は仲間内だけのLINEグループ、高齢者は地元自治会の中だけで人間関係が完結し、そこから出ないし、新参者も受け入れない。

世代は完全に断絶していて、交わる・受け入れるという発想がないがゆえに、特に大声を上げて走り回ったり騒いだりする子どもは「自分とは違う異星人」「人間ではない何かの環境騒音」「ただ迷惑をかける存在」のような感じでイライラさせられるのでしょう。

ベビーカーも彼らからすれば自分たちの生活環境にはない異質の存在ですから、何でこんなものを電車内に持ち込むのか理解できないのでしょう。

Next: なぜ「赤ちゃんが乗っています」にイライラするのか



自分のことで精一杯。他人を思いやる余裕がなくなっている

もう1つは、他人を思いやる余裕がなくなっている傾向があるようにも感じます。みな自分のことに精一杯で、他人のことを気にしている余裕がない。

だから自分にも幼少期だった頃があるとか、自分も周囲に迷惑をかけながら育ってきたということにすら想像が及ばない。

想像力が欠如しているから、子育ての大変さも想像できない(たとえば乳児連れで外出したことがある人はわかると思いますが、おむつ、おむつ袋、粉ミルク、お湯の入ったボトル、水、吐いたりウンチが漏れたりしたときのための着替え、などなどたくさんの荷物が必要で、「ベビーカーを使わないとやってられるか!」となります)。

ラッシュの時間帯にベビーカーを持ち込むなという気持ちもわかりますが、やむを得ずその時間帯に乗るしかない事情があるんだろうという想像力が働かない(たとえば病院の検診などで時間がずらせないとか、私も経験がありますが、出張時に飛行機の時間が限られていて、ラッシュとわかっていても乗らざるを得ないときがありました)。

そして実生活で満たされたない承認欲求。だから他人も認める余裕がない。

そんなふうに、ただでさえストレスまみれなのに、子どもの声はもはや騒音にしか聞こえない。男性の方が他人に対して排他的・攻撃的になる傾向が強いため、自分が考える正義(公共の場では静かにするべき、住環境は静かであるべき)を実現しない子どもには、余計に否定的感情を抱くのでしょう。

女性がそういう感情を抱くとすれば「嫉妬」でしょうか。たとえば年賀状の家族写真でも、「自慢か?見せびらかしか?他人の幸せそうな姿なんて見たくない」と、やはり満たされない自分と比較してしまうのでしょう。

確かに、「そこのけそこのけ、ベビーカー様だ!」などと言わんばかりの横柄な使い方をしている人も散見します。すれ違う時によけようとしないとか、店内の通路をふさいでいるのに気が付かない無神経な人もいます。

子どもが騒ぎ回って明らかに周囲は迷惑そうなのに、何もせず放置している親もいます(ただこれも、何か理由があるのかもしれません)。

車の「赤ちゃんが乗っています」「Baby in Car」というステッカーには、「赤ちゃんが乗っているからゆっくり走りますね」というより、「赤ちゃんが乗ってるんだから煽るなよ!」「赤ちゃんが乗ってるんだからお前ら配慮しろよ!」という、ある種の傲慢な圧力を感じることもあります。

そういう日常体験でのうっぷんが積み重なっている人がいるのもわかります。

他人を変えることはできない

では、このような“冷たい”人たちに対して、子育て中の親はどう対応すればいいのか?私の考えでは、どうすることもできません。

こういう「赤の他人への無関心さ」「他人に配慮する余裕のなさ」を払しょくできる環境変化が起こるようには思えないからです。

むしろコロナで「自粛警察」「マスク警察」が増長するなど、ますます加速していく状況のようにも思えます。欧米などと違って宗教的背景も薄いですから、「汝、隣人を愛せよ」なども期待できないでしょう。

だから私は、子どもに冷たい人を変えようとするのは無駄な労力で、子育てをする私自身が堂々としていればいいと考えています。

他の親がどう考えるか、それはその人の自由ですが、「子育てしやすい社会に変えていかなければならない」というのは単なる思考停止で何も変わりません。

実際、「社会の風潮を変えるって、具体的にどうするんですか?」を考えたとき、方法が思い浮かぶでしょうか?

ポスターを掲示したりリーフレットを配って啓蒙する?本当に効果があると思いますか?それでどうにかなるなら、あらゆる犯罪、いじめ、虐待がなくなっているでしょう。

Next: 子育ては立派な社会貢献。堂々と対応するコツ



堂々と対応するしかない

「社会が悪い」「社会を変えないといけない」というのは、何も考えていない人の逃げ口上です。

仮にそうだとしても、具体的な解決策や効果測定が可能な打ち手が思い浮かばないなら、原因の掘り下げが浅すぎる、課題設定が雑すぎるということ。

問題解決の場面において、その原因に「社会」という茫漠としたものを設定すれば、たちまち思考停止し、解決には程遠くなるだけです(学者や研究者でさえ、そういう人は少なくないですね)。

だから、そんなもののせいにしない。まずは自ら変わる。自ら行動する。

もともと私は他人にどう思われるかはまったく気にしないので、前述の通りベビーカーを蹴られたら、どんな場所であろうと大声で怒鳴り返すなど、徹底的に戦います。自分でも思いますが、ほんと面倒くさい人間ですよ、私は(笑)。

しかし、そこまではできない人の方が多いと思います。

特に女性が混雑する電車内で大声を張り上げて反論するというのも難しいでしょう。

子育ては立派な社会貢献

そこで、ひとつの心構えをご紹介します。

「私は未来の種を植え、育てている」
「その種がすくすく成長するために、あらゆる選択肢を排除しない」

自分の子がもしかしたら日本や世界を変える人物になるかもしれない。いま批判している人やその家族の生活がより良くなるイノベーションを起こすかもしれない。むろん拡大解釈ではありますが、可能性はゼロではない。

そしてそう考えれば、子育ては純粋な社会貢献ですから、そこらへんの凡人が文句を言う筋合いなどないでしょう。

それで文句を言う人がいたとしても、

お前は社会貢献を否定するのか?
お前のどこに未来の芽を摘む権利があるのか?
未来の日本を担う子どもに制限を加えられるほど、お前は偉業を成してきたというのか?

と思えば、周囲が何を言おうとスルーできるのではないでしょうか。

そもそも自分の権利ばかり振りかざす人(保育園うるさいから建設反対、学校うるさい、公園うるさい、ついでに除夜の鐘もうるさい)に限って、小心者なのですから。そんな人の意向を聞くことはむしろマイナスでしょう。

Next: 子どもがすくすく育つためにも、親は心に余裕を持って過ごしたい



親は心に余裕を持って過ごしたい

そして、子がすくすく育つには、親自身に余裕がなければなりません。

子に寄り添い、子の発育を見守る余裕が必要です。余裕がなければ、子の自己肯定感を育めないし、発達の課題や得意分野も才能も見抜けないでしょう。

だから、親が余裕を持てるなら手段を選ばない。すべてを手段にする。それがたとえば、液体ミルクであったり、ベビーカーであったり、親が少しでもラクになる方法を選ぶのは、非常に合理的な行為です。

わが家でも、ベビーシッターや家政婦にも来てもらっていますし、総菜も買うし、宅配も外食もします。ほかにも全自動洗濯乾燥機や食洗器、ルンバのような掃除ロボットを使っている人もいると思います。便利なのものがあるのに、あえて文明を過去に戻す必要などないでしょう。

ベビーカーや液体ミルクや紙おむつも、あとは以前に話題になった「ポテサラ論争」もそうですが、それを指して「親の怠慢だ」などという人がいたら、こう返してみたいものです。

「ならお前はスマホをやめて、固定電話だけにできるか?」
「ベビーカーも電車もラクに移動する手段だから怠慢なのは同じだろう。ではお前は電車をやめて歩けるのか?」
「お前はイモから作っているのか?」

ま、最後は笑い話ということで(笑)。

有料メルマガ好評配信中!初月無料です

【関連】貧乏な家の子どもがお金持ちになれない本当の理由と「思考格差」の正体=午堂登紀雄

【関連】世の女性たちが知らない、男から見た「将来億を稼ぐ男性」の条件=午堂登紀雄


※有料メルマガ『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』好評配信中!興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込1,012円)。

2020年11月配信分
  • できないことよりできることに全集中(11/23)
  • 夢をあきらめるということ(11/16)
  • あきらめ上手は生き方上手?(11/9)
  • 2020年の計画を振り返る(11/2)

2020年11月のバックナンバーを購入する

2020年10月配信分
  • 新刊プレゼントキャンペーン(10月28日まで)のお知らせ(10/26)
  • 持ち家にはメリットがたくさん(10/19)
  • 「言葉にできる」はお金になる(10/12)
  • 古民家再生ビジネスは不動産投資ではない(10/5)

2020年10月のバックナンバーを購入する

2020年9月配信分
  • 思考停止していく世界に備える(9/28)
  • 健康は財産である!(9/21)
  • 貧困のバーゲンセールが始まる?(9/7)

2020年9月のバックナンバーを購入する

2020年8月配信分
  • ツイッターには稼ぐヒントがある?(8/24)
  • 最初の1歩は情報発信から(8/17)
  • コロナ時代のビジネスモデル(8/10)
  • 富裕層とは何か?(8/3)

2020年7月のバックナンバーを購入する

2020年7月配信分
  • 抽象化思考の重要性(7/27)
  • 宗教法人の買収を考えてみる(7/20)
  • あきらめることは意味がある(7/13)
  • 資本金は1円でいい理由(7/6)

2020年7月のバックナンバーを購入する

2020年6月配信分
  • 草刈りはやはりやっかいでした(6/22)
  • 香港動乱で考える(6/15)
  • コロナで変わるキャリア戦略(6/8)
  • 自分の仕事を仮想空間に持ち込めるか?(6/1)

2020年6月のバックナンバーを購入する

2020年5月配信分
  • コロナでもほったらかしで稼ぐ方法とは?(5/25)
  • 教育格差を乗り切るために(5/18)
  • 起業塾なんて不要?(5/11)
  • ピークエンドの法則で今を焦らない(5/4)

2020年5月のバックナンバーを購入する

2020年4月配信分
  • アフターコロナ時代を見据えて人生戦略を見直す(4/27)
  • マンガ始めました(4/20)
  • 個人はコンテンツで勝負する(4/13)
  • コロナで売上半減です(4/6)

2020年4月のバックナンバーを購入する

2020年3月配信分
  • やはり投信積立は信頼できないが、今なら?(3/23)
  • ついに強制ロスカットに遭いました!(3/16)
  • 暴落相場は今か?待つべきか?(3/9)
  • 意思を持てば世界の見え方は変わる(3/9)
  • コロナで大暴落相場にチャンス?(3/3)
  • イライラしない人になる!(3/2)

2020年3月のバックナンバーを購入する

2020年2月配信分
  • イライラは人生の無駄遣い!(2/24)
  • 家族や親戚に反対されたら・・・?(2/17)
  • あきらめてもいいんじゃないか?(2/10)
  • インフルエンザで倒れました。。(2/3)

2020年2月のバックナンバーを購入する

2020年1月配信分
  • 読者のみなさまへ、バックナンバーのご案内(1/28)
  • 「これだけは避けたい」という軸を持つ(1/27)
  • 「場」を作れば何かが起こる(1/20)
  • 誰でもお金になるネタを持っている(1/13)
  • 2020年の計画(1/6)
  • 【新年特別号】「汗水たらして働くほど貧乏になる」2020年代にお金を増やす5つの技術(1/1)

2020年1月のバックナンバーを購入する

【関連】100歳まで病気でも貧困でも「生かされる」地獄、生活保護の半数以上が高齢者=鈴木傾城

【関連】なぜ「格差婚」は幸せになれないのか? 夫婦の亀裂につながる4つの格差=午堂登紀雄

【関連】なぜ日本のシングルマザーは地獄なのか?約123万2,000世帯の半数が貧困=鈴木傾城

【関連】日本で急増する「住所を喪失」した人たち~車上生活、漂流女子、8050問題が行き着く地獄=鈴木傾城

image by:MAHATHIR MOHD YASIN / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年12月1日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門

[月額1,012円(税込) 毎月第1月曜日・第2月曜日・第3月曜日・第4月曜日]
フリー・キャピタリストとは、時代を洞察し、自分の労働力や居住地に依存しないマルチな収入源を作り、国家や企業のリスクからフリーとなった人です。どんな状況でも自分と家族を守れる、頭の使い方・考え方・具体的方法論を紹介。金融・経済情勢の読み方、恐慌・財政破綻からの回避方法。マネタイズ手段としての資産運用、パソコン1台で稼げるネットビジネス、コンテンツを生み出し稼ぐ方法。将来需要が高まるビジネススキルとその高め方。思考回路を変えるのに役立つ書籍や海外情勢など、激動の時代に必要な情報をお届けします。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。