キャッシュレス・ポイント還元事業は、前半と後半で天国と地獄でした。コロナで大失速したからです。ところがその後、逆にコロナが追い風となって一気に脱現金化へ。この調子なら政府が目標としている2025年のキャッシュレス決済比率40%達成も難しくないと思うようになりました。(『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』岩田昭男)
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消費生活評論家。1952年生まれ。早稲田大学卒業。月刊誌記者などを経て独立。クレジットカード研究歴30年。電子マネー、デビットカード、共通ポイントなどにも詳しい。著書に「Suica一人勝ちの秘密」「信用力格差社会」「O2Oの衝撃」など。
前半と後半で天国と地獄だった「キャッシュレス・ポイント還元事業」
キャッシュレス促進のための「キャッシュレス・ポイント還元事業」は2019年10月1日から2020年の6月30日までの9か月間にわたって対象となる小売店で行われました。
キャッシュレスで、買い物すれば5%(コンビニなどでは2%)のポイント還元を受けられるという事業でしたが、その前半期と後半期ではまったく、別の展開となりました。
前半期は極めて順調に進みましたが、2020年になってからの後半期は新型コロナウィルスの影響で散々な結果となったからです。
コロナウィルスで変わったキャッシュレスへの評価
2020年1月初旬、中国の武漢から始まった新型コロナウィルスは、あっという間に全国 に広まり、小売店の時短営業や休業へと発展しました。
人々は感染を恐れて、三密を避けるようになり、4月の緊急事態宣言時には家にこもって外出を自粛したため、多くの繁華街がゴーストタウン化しました 。
当然、ポイント還元事業の主役だった多くの小売店もコロナの直撃を受けて、売上が前年同月比7~9割減といった有り様となりました。
このとき私は、キャッシュレスはコロナに潰されるのか?と不安になったものです。実際、わが国はリーマンショック以上の経済的損失を被りました。
しかし、5月になると状況は少し変わります。スーパーやコンビニのレジにビニールシートがかけられて、新型コロナウイルスの感染を防ぐようになり、さらに店員は口々に「現金払いは止めてキャッシュレスに変えて欲しい」と言うようになりました。
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「生命の危機」がキャッシュレスを後押し
現金は新型コロナウイルスが付着していて感染の恐れがあるということから、一部の店では非接触のキャッシュレスにすると言い出しました。
意外にもコロナが、こうして追い風となってキャッシュレスは息を吹き返しました。コロナに叩き潰されたと思っていたのに、見事に復活したのです。
それ以来、主婦たちは進んでキャッシュレスを使おうとするようになり、特にPayPayなどのQRコード決済の伸びは大きなものがありました。
私もこの調子なら政府が目標としている2025年のキャッシュレス率40%達成も難しくないと思うようになりました。
「生命の危機」がモチベーションになって、キャッシュレスの普及を後押ししたのです。これは凄いことです。
ウィズコロナ時代に訪れるキャッシュレス「6つの変化」
しかし、今後キャッシュレスが普及してもなお、コロナ感染も残るようであれば、カードの選び方やカードの使い方は、これまでとは変わってくる可能性があります。
すでにその変化は出ています。
ウィズコロナ時代のキャッシュレスとの付き合い方を、以下にまとめましたので参考にしてみてください。
1)コロナ禍を受けて端末に直接触れないで決済できる「Visaのタッチ決済」などの非接触決済への関心が高まる。
2)カード選びの基準としてポイント還元率が重視されてきたが、今後はセキュリティの高さも問われるようになっていく。
3)ドコモ口座の不正利用からQRコード決済のセキュリティの弱さが指摘されるようになった。それを受けて、セキュリティが堅牢なクレジットカードをメインのキャッシュレス決済に選び、そこにQRコードや電子マネーを紐付けるという選択肢がさらに注目を浴びるようになるだろう。
Next: セキュリティがより重要に。今後のキャッシュレス動向
4)政府が騒いでいる「デジタル化」の推進にも影響が出る。まず、スマホと連携してキャッシュレスの利用金額や残額を「見える化」すれば、いちいち使い過ぎを気にすることもなくなる。これが第一。
5)個人では、家計簿アプリとクレジットカードを連携させれば家計のデジタル化が実現する。法人カードならクラウド会計と連携させて、会社の経理をデジタル化して経費精算を簡素化することもできる。
6)さらに、キャッシュレスになると、自らの個人情報をどうやって守るかということが関心事になる。「データポータビリティ」という権利が認められるようになると、自分の個人情報を持ち運べるようになり、個人情報の守り方が劇的に変わるはずだ。
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『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』(2020年12月1日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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世の中すっかりカード社会になりましたが、知っているようで知らないのがクレジットカードの世界。とくにゴールドカードやプラチナカードなどの情報はベールに包まれたままですから、なかなかリーチできません。また、最近は電子マネーや共通ポイントも勢いがあり、それらが複雑に絡み合いますから、こちらの知識も必要になってきました。私は30年にわたってクレジットカードの動向をウォッチしてきました。その体験と知識を総動員して、このメルマガで読者の疑問、質問に答えていこうと思います。ポイントの三重取り、プラチナカード入会の近道、いま一番旬のカードを教えて、などカードに関する疑問にできるだけお答えします。