米国旅行のお土産で困る「アメリカにあって日本にはないもの」

2015.10.14
by NozomiK
 

「変な人慣れ」してしまっていた自分

シアトルは、アメリカ人が住みたい街ランキングのトップグループに入る、住みよい街といわれます。治安がよく、日本やアジアの国からの留学生もたくさん来ます。私もここに住んで10年、実際に危険な目に遭ったという経験はありません。それなのに、生まれて初めてここを訪れたときは、常にビクビクしていました。治安がいいとはいえ、日本よりは犯罪率も高いし、人とのコミュニケーションの形も違います。知らない人がしょっちゅう話しかけてくるし、人目を気にせず、ヘンテコな行動をする人もたくさんいて、果たしてこの国の基準で、どこまでが正常で、どこからがおかしいのか、日本からポッとやってきたときの感覚では掴めなかったのです。

でもやはり長くいるうち、その感覚が養われてくる。親切な人、おもしろい人、かっこいい人、かっこわるい人。自分が外国から来たからそう思うのではなく、現地の人にとっても変な人、きもちわるい人を見極められるようになってきます。

そして、「変な人」への対応のしかたも身に付きます。変なだけだから、構えることはないというような感覚。たとえば、ホームレスとひとことでいっても、人に迷惑をかけない人もいれば、イチャモンをつけて迷惑をかける人もいる。どう見てもおかしな行動をしている人もいるけれど、危害を加えてくるわけじゃないので、無視すればよいだけの人たちです。変なことを言われそうなムードを感じたら、道の反対側に渡って回避すればいいし、迷惑をかけない人とはアイコンタクトで挨拶をしたり、会話をすることもあります。

先日、キットと近所を歩いていたら、向こうからショッピングカートを押して歩いて来る男性がいました。ショッピングカートはホームレスの人がよく生活用品を運ぶのに押しているので特に気にもとめず、すれ違う時に男性の顔を見上げてアイコンタクトを試みました。

すると彼は私の目をギロリと見据えて、脅しの言葉を吐いて通り過ぎたのです。うわ、変な人だった! と思い、コノーと思ったけれど、変な人とは関わるべきではないので、黙って立ち去りました。と、2ブロックほど先に2台のパトカーが止まっていて、警察が路上に止めてある車と、持ち主を囲んで話しています。何かあったのかなと思いながら通り過ぎる時に、その近所の人が、事件を起こしたらしき人物の特徴を、警察に告げているのが耳に入りました。その特徴は、まさに今私がすれ違った「変な人」のことだったのです。

駆け寄って、今その人とすれ違いました、あっちに向かって歩いていきましたよ! と告げ、彼が何をしたのか訪ねると、ハンマーで車の窓をガツン! と叩いて逃げ去ったと…

つまり、あのショッピングカートの中に、ハンマーが積まれていたのです。銃社会のアメリカといえど、実際に銃を持ち歩いている人など見たことのないシアトルですが、ハンマーなどという道具を武器として持ち歩いている狂人もいる。ゾーッとして、ヨロヨロしました。動揺しながら混んだ通りに出て、これはアイスクリームでも食べて落ちつかねば! とアイスクリーム店でキットを膝に抱いてアイスクリームを食べながら、しばし考えにふけりました…

自分がすっかり、「変な人慣れ」してしまったことが怖くなりました。こちらに来て間もない頃は、日没後はたとえ近所でも出かけるのが怖かったし、変な人を見れば、変な人だ、と思っていました。この国を知らなかった頃に持っていた、銃社会だから危険だろうといったような、ステレオタイプの感覚が、「アメリカ本場ファンタジー」と一緒に消えてしまっていました。

ここへ来て10年、ついに初めて、ペッパースプレーを買いました。しかしいざというときに早撃ちガンマンのようにこれを使えるかどうかは、ナゾであります。そしてそのペッパースプレーのケースのデザインがあまりにもKAWAIKUNAIので、KAWAII仕様にカスタムしようとしている次第です。

image by: Shutterstock

 

道産子絵描き粥川由美子の絵にも描けないシアトル・デイズ
狼に育てられた画家・粥川由美子が、絵、街、犬との暮らし、そして今まで話せなかったけどいっそ話してしまいたいこと(など!)を、もうイチローのいない街からお届けします。

≪登録はこちら≫

print
いま読まれてます

  • 米国旅行のお土産で困る「アメリカにあって日本にはないもの」
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け