アメリカこそシリア混迷の元凶だ。偏向報道を続ける日米マスコミの愚

 

米国は早期に軍事介入すべきだった?

オバマ大統領は、アサド追放を口では求めつつ、アメリカの実質的な介入を慎重に避けてきた。シリアの反体制派から武器供与の要請があった際も、オバマは躊躇した。その後、アサドは自国民に化学兵器を使用して、オバマが越えてはならないとした「レッドライン」を平然と無視したが、何も行動を起こさず、同盟国を驚かせた。……オバマは「何がなんでも何もしない」というただ1つの基本原理に導かれているようだ。(NW)

オバマ=弱腰論典型で、これはマケインら過激派の軍事介入を求める主張に寄り添った米国内論調主流である。しかし考えてもみよう、オバマ政権はブッシュ前政権がネオコン派にコロリ欺されて転がり込んだアフガンとイラクの間違った戦争の傷跡を癒すために、ほぼ全精力を費やしてきた。両戦争の最大の教訓は、世界史上最強と言われる米国の軍事力を以てしても現代世界が抱える問題は何一つ解決できないどころか、ますます事態を悪化させるだけだという明白な事実である。実際、シリア問題の本質である、ISという今や国際社会にとって最大の脅威である悪質癌細胞は、まさにブッシュ政権の迷妄が作りだした化け物にほかならない。

アサドが自国民に化学兵器を使ったという話も、反体制派が流した噂話の類で、イラク戦争で亡命イラク人の与太者が持ち込んだ架空話を米CIAが信じ込んでブッシュが開戦の理由にしてしまったのと同パターンの謀略であった可能性が濃い。だから、オバマがそれを理由にしてダマスカス空爆に踏み切らなかったことは、「同盟国を驚かせ」てなどいない。どの国が驚いたのか明示することなしに、NWはこのようなデマを飛ばすべきではない。ただし、NWは、

もっとも、オバマが軍事介入に踏み切っていれば現在のような悲惨な状況は避けられた、とは誰も明言できない。(NW)

と逃げは打ってはいる。しかしこういう言い方は無責任で、じゃあどうすればよかったのか明言すべきだろう。

image by: ChameleonsEye / Shutterstock.com

 

 『高野孟のTHE JOURNAL』より一部抜粋

著者/高野孟(ジャーナリスト)
早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。
≪無料サンプルはこちら≫

print
いま読まれてます

  • アメリカこそシリア混迷の元凶だ。偏向報道を続ける日米マスコミの愚
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け