アメリカこそシリア混迷の元凶だ。偏向報道を続ける日米マスコミの愚

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シリア情勢に関してロシアやアサド政権を批判する報道が目立ちます。しかしジャーナリストの高野孟さんは『高野孟のTHE JOURNAL』で、シリア混迷の原因は「米国の一部過激勢力が煽り立てた反アサドの内乱」とし、マスコミをばっさり斬っています。

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米国や日本のシリア情勢についての報道や分析は、「アサド憎しロシア憎し」の感情論を出発点にしているために、プーチン大統領の対IS国際共同戦線結成の呼びかけとそれに先行したロシア軍による軍事介入の意味を著しく曲解し、誹謗中傷さえ加えている。最近では、ニューズウィークNW)10月20日号の特集「世界最悪の危機、絶望のシリア」が酷かったし、そこで言われているのと同工異曲のことを、比較的世の中のことがよく見えている人であるはずの藤原帰一までが朝日新聞のコラム「時事小言」で書いているので、正直、かなり驚いた。

アサド政権の暴力が難民を生んだ?

「アラブの春」に触発されて、シリア人もアサド政権の圧政に抗議する静かなデモに立ち上がった。しかしアサド政権は彼らを容赦なく押さえ込み、拷問や殺戮を行った。……アサドは、国を崩壊させても権力の座を守り抜こうと決意した。(NW)

難民の多くがアサド政権の暴力を恐れて国外に逃れた。(藤原)

アサド政権が「シリアの春」に対して強圧的な対処をしたのは事実である。しかし、少なくとも当初の段階では、アサドは同時に、民主派の要求にもそれなりに耳を傾け、いくつかの改革案を示して政治的に収拾しようとする姿勢も示していた。しかし、これは鶏と卵で、どちらが先か後かは不明だが、アサドの弾圧が苛烈さを増す中で反体制派の武装化が始まり、そこにすぐにアル・カイーダ系や後のISに繋がる外国人武装勢力が絡み込んで、しかも「民主化支援」の名の下に米国のネオコン派やジョン・マケイン上院議員らが手を突っ込んで、それらに武器や資金供給し始めたことによって、1年後には「静かなデモ」だったはずのものは血みどろの内戦に転化した。

5年近くにわたる内戦で命を落としたシリア人は約25万人。国内避難民は800万人近く。国外に逃れた400万人超の難民は増え続けるばかり。今なお何十万人もが絶望の淵からヨーロッパを目指している。(NW)

それはその通り。しかしその難民は、米国の一部過激勢力が煽り立てた反アサドの内乱の悲惨が生み出したものであって、「アサド政権の暴力」だけがその原因であるかに言うのは狂っている。

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