テロであろうが、テロ撲滅の戦いであろうが、はたまた民族紛争であろうが、人を殺戮し、モノを破壊する兵器で儲けている以上、軍需産業に、危機をあおり戦争を挑発、拡大しようとする動機が存在することは疑うべくもない。
そこで、より深刻なのは、超大国アメリカにとって、優秀な科学者、技術者の多くがかかわっている軍需産業こそが経済の屋台骨であることだ。軍事会社が利益を上げられなくなると、大勢の失業者が巷にあふれるだろう。
米国の議員たちは地元の軍需企業と雇用のために、予算確保に動き、選挙資金や票の獲得をめざすのだ。
そして米国防総省やCIAは、軍需産業と一体化し、「軍産複合体」と呼ばれる利権ネットワークによって、米国やその同盟国の外交防衛政策を動かしている。
米国防総省の「国防政策委員会」は、軍需産業の利益をはかるため戦争政策を練っている、とさえいえる組織である。
◆(国防政策委員会のメンバーには)元CIA長官のジェームズ・ウールジーもいた。ウールジーは、ブーズ・アレン・ハミルトン社(軍事諜報企業)の副社長でもあり、2002年に6億8000万ドルの契約を国防総省との間で行った。(宮田律著「軍産複合体のアメリカ」より)◆
国防総省、軍需産業、CIAの関係をウールジーという、たった一人の人物から見てとれるのだ。
米国だけではない。ヨーロッパも同じ構造だ。米、露、中に次ぐ武器輸出国、フランスはオランド政権の戦略のもと、ISとの戦いの激化に乗じて巨利を得た。
◆フランスの軍需産業が業績を伸ばしている。今年の受注額は150億ユーロ(約2兆1000億円)を超え、昨年のほぼ2倍となる見通しだ。中東の情勢緊迫化などに伴う「特需」を追い風に、米国の影響力が低下している地域を狙って軍需品を売り込むオランド政権の戦略が奏功しているようだ。(6月21日、読売新聞 )◆
仏軍産複合体はサウジアラビア、カタール、エジプトなどに戦闘機やミサイルを売り、フランス軍はISを空爆、そのあげく、何の罪もない一般市民が、テロの犠牲になってしまう。こうやって不条理は繰り返される。
安保法制と武器輸出解禁によって、三菱重工など日本の軍需関連企業も意気込んでいる。自衛隊とともに、米軍産複合体に組み込まれるということかもしれない。
しかし戦争ビジネスが発展すればするほど、ニューヨークやパリで起きたようなテロ事件を呼び込む危険性が高まることは言うまでもない。
成長戦略が見つからないので、軍需産業で儲けようという安倍政権や経団連のもくろみには断固、反対である。
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『国家権力&メディア一刀両断』 より一部抜粋
著者/新 恭(あらた きょう)
記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。
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