高齢化社会へと進む日本。最近ではエンディングノートと遺言書のダークなイメージは払拭されつつあり、大切な人への最後のメッセージという意味合いが強くなってきています。しかし実際のところ、2つの違いや使い分け方法を知る人は多くありません。メルマガ『こころをつなぐ、相続のハナシ』では、エンディングノートと遺言書の違いと正しい使い分け方をわかりやすく解説しています。
エンディングノートと遺言書
エンディングノート、という言葉が世に出て、おそらく10年近くなるでしょうか。その頃から相続の仕事に携わっている身としては、「ずいぶん浸透したなぁ」なんて感じています。最近では種類も豊富。様々な団体が作成していますし、書店でもたくさん並んでいます。
さて、ではこのエンディングノート。その役割や位置づけを正しく理解できているでしょうか。今日はエンディングノートと遺言書の役割の違いについて、お伝えします。
まずは大きな違いから。
遺言書は、法律で決まった文書。一方エンディングノートは、法律は関係ありません。
遺言書に書いてあることは、その遺言が有効なものであれば、法的な効力が生じます。たとえば誰に何を相続させる、とあれば、原則としてその通りにしなければなりません。
一方でエンディングノートは、法的な効力は一切ないと思って、ほぼ間違いないです。エンディングノートの中には、遺産を誰に渡したい、とか、形見分けをどうしてほしい、等さまざまな希望を書く欄がありますが、これはあくまでも「希望」であって、何ら法的に拘束できるものではないのです。尊厳死を望むかどうかとか、介護をどうしてほしいかとか、そういったことも同様です。
つまり、遺言書は法的に一定の拘束力がある。一方、エンディングノートは法的な効力はない。これが大前提です。
そして、遺言書は法的な効力を満たすためにさまざまなルールがありますが、エンディングノートはそもそも法的なものではありませんので、書き方や内容は、自由です。まずはこれを覚えておかれると良いでしょう。
では、エンディングノートは意味がないのか? というと、私はそうは思いません。エンディングノートは、こんな役割があります。
1.遺言書を書くための気持ちの整理
たとえばいきなり遺言書を書こうと思っても、誰に渡したいか、どういう配分で渡したいか、等なかなか決められないこともあるでしょう。
エンディングノートには、これまでの人生でお世話になったかたのことや、嬉しかったこと、悲しかったことなどを書く欄があります。こういった欄をつかって人生の棚卸をして、だれに何を渡したいか、考えを整理するために使われると良いでしょう。
2.遺言書を書くための財産の棚卸
遺言書には原則として、すべての財産について書いておくのが望ましいです。
まとめて書いたり「全財産の3分の1を~」等と書いても無効ではないのですが、実際の手続の際には、たとえばA銀行の預金は誰の口座に入れるのか、等もらう人を特定する必要があるためです。
もちろん細かいものは「その他の財産」とまとめても良いですが、できるだけ具体的に書くためには、ある程度財産を把握してから書くと良いでしょう。そのためにエンディングノートが活用できます。
また、相続税が心配な方は、この段階で基礎控除額を超えそうかを仮計算してみて、相続税が発生しそうであれば、専門家に記載内容を相談することをおすすめします。