湯村ホテル(山梨県湯村温泉)
湯村温泉は、山梨県甲府駅からタクシーで10分ほどのところにある温泉地。歴史は古く、1200年前に弘法大師が開湯したという。武田信玄の隠し湯ともいわれ、井伏鱒二や太宰治も訪れている。
だが、現在は「情緒ある」温泉街というものはほとんど残っていない。
とはいえ、市内の目抜き通りの県道6号を曲がった細い道沿いに、宿が建ち並び、オーセンティックなラーメン店やそば屋、郷土料理店、理髪店やつぶれたスナック(鬼娘=きむすめ?の看板が恐い)、寺院などがひしめくように並んでいる様は、往時の様子を想像してあまりある。
温泉は毎分830リットルで、源泉数は12本とされている。自家源泉を持つ宿も多い。
甲府周辺には源泉温度の低いぬる湯の名湯が多いのだが、湯村の特徴は、源泉温度が平均して41度くらいだということ。つまり、加水も加温も必要のない、源泉かけ流しを実現するのにはぴったりの湯が湧いていることだ。
今回ご紹介するのは、そのこぢんまりとした温泉街の入り口に位置する湯村ホテルである。
シングルルームがあってビジネスユースにも対応しており、ひとり旅にはうってつけ。 素泊まりで6500円(税別)と宿泊料も手頃。HPの割引券を利用すると10%オフになる。
そして、あまり大声ではいえないが、領収書は正規料金で発行される。会社員の場合は、650円がお小遣いになる勘定だ。フリーランスの僕にはあんまり関係ないけれど。
お湯がまたいい。 もちろん自家源泉100%かけ流しである。泉質はナトリウム・カルシウムー塩化物・硫酸塩泉で源泉45.8度。貯湯タンクを介さず、源泉をそのまま浴槽に入れており、浸かっていると体に細かな泡がつく。 肌をなでると、ビロードのような感触がすばらしい。
食事もうまい。 朝夕ともにバイキングなのだが、地産地消を標榜していて、甲州地鶏やワイン豚、地元産の野菜などをふんだんに使った料理が並ぶ。
まあ、僕はほとんど夕食をここで食べないのだが、朝飯だけは食べる。こちらも明野の赤玉卵、八ヶ岳高原の牛乳、水出し珈琲など、こだわりの品々を始め、パンやご飯も、サラダも、ハムやソーセージなども美味である。
今や完全に僕の常宿と化していて、毎年10泊以上している。『温泉失格』も大半をここで書いた。 なんか作家みたいで気分が良かったかというとそうでもなくて、全然原稿が進まず、青ざめて飲んでばかりいた。
シングルルームはテーブルといすのビジネスホテルスタイルだから、PCを持ち込んで仕事をするにはもってこい。 むろん、有線、無線のLAN完備。
週末に仕事を持ち帰ったオトーさんは、ここに閉じこもると、子供たちに邪魔されず、仕事もはかどるはずである。
夕方までしこしこ仕事をした後は、早めに大浴場に出かけると、ほとんど「独泉」状態である。 小さいながら露天風呂もあり、電気風呂になっている。この電気がものすごい。 近づきすぎると手足が反り返り、奥歯がガチガチいうほどすごい刺激である。 初めての人はご注意を。