英国は2度裏切る。米国と中国の間で揺れる「欧州」に不穏な動き

 

欧州、今年の課題は?

ここまで「米中覇権争奪戦」の中の欧州について触れました。ここからは、もっと欧州内の問題に触れましょう。

欧州、2014年最大の課題は、「ロシアーウクライナ問題」でした。2014年3月、ロシアがクリミアを併合したからです。

ところが2015年2月、ロシア、フランス、ドイツの仲介で、ウクライナと東部親ロシア派の和解が成立した。以後、ウクライナ問題は、ほとんど忘れさられています。そして、欧州最大の問題は、

・難民
・イスラム国(IS)

に移りました。そして、2016年も、「難民」と「IS」は、欧州最大の問題でありつづけるでしょう。

なぜでしょうか?

前々号で、「アメリカが中東への関与を減らすことで、シリアはごちゃごちゃになっていく」と書きました。そして、早くも予想通りの展開になってきています。とても大きな事件が、年初から起こったのです。

スンニ派の大国サウジアラビアが、シーア派の大国イランとの「外交関係断絶」を決めた。ブルームバーグ1月4日付を見てみましょう。

サウジがイランとの外交関係を断絶 Bloomberg 1月4日(月)5時47分配信(ブルームバーグ):サウジアラビアは3日、緊張が高まっているイランとの外交関係を断絶し、同国の外交官を国外に退去させることを明らかにした。

なぜ、こんなことになったのでしょうか?

断交の発表は、シーア派に対するサウジの対応に批判的だったニムル師の処刑を受けて、群衆がテヘランのサウジ大使館を襲撃したことがきっかけ。サウジはテロ活動に関与した罪などでニムル師ら47人を処刑した。(同上)

まずサウジが、シーア派の著名な指導者二ムル師を処刑した。

これに激怒したイランの民衆が、テヘランのサウジ大使館を襲撃した。それで、サウジが、イランとの外交関係断絶を決意した。これは、直接的動機ですが、背景には、「長年の恨み」があるのです。

「怖い警察官」(アメリカ)が、「もう疲れたから、あんたたち好きにやってくれ!」と職務を放り出したので、ケンカをはじめた。これは、怖いソ連崩壊後に、旧共産圏で民族紛争が多発したのと同じ構図です。

で、シリアはどうなるの?

両国間の緊張のエスカレートは、既に難航しているシリアの内戦終結に向けた取り組みにマイナスとなる可能性が高い。シリアではサウジがスンニ派の武装勢力を支援し、イランがアサド政権を支持している。(同上)

サウジは、「反アサド」を支援している。イランは、「アサド政権」を支援している。それで、「シリア内戦」は長引きそうだと。

そして、このシリアから、続々と欧州に難民が押し寄せている。その数、2015年だけで100万人(!)をこえたそうです(もちろん、この数は「シリアからの難民だけ」ではありません。イラク、アフガニスタン、リビアなどからの難民もいます)。

衰退したアメリカの責任放棄で、中東が大荒れになっていく。そして、今年も大量の難民が欧州に殺到する。その中には、「ISメンバー」も含まれていることでしょう。というわけで、欧州今年最大の問題は、

・難民
・IS

で変わらずということなのです。

前々から書いていますが、「衰退期」にある「欧州キリスト教文明」は、イスラム教徒の移民、難民で、長期的に滅びる可能性があります。純粋に、人口でイスラム教徒がキリスト教徒を上回り、EUは、数十年後IUイスラム連合になってしまうかもしれません

日本は、欧州の愚かな失敗を教訓に、「移民政策にはくれぐれも慎重であるべきなのです(日本の場合、大量移民受入れで、「中華人民共和国・小日本省」になる可能性がでてくる)。

image by: Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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