私は「どっちも真実だろう」と思います。実際、この3社は、「アメリカ政府の意向に従った格付けをつける」ことで知られています。比較的記憶に新しいところでは、「サブプライムローン」に「トリプルA」を出し、「危機に加担した」と批判されていた。そして、「AIIBの中身がメチャクチャ」であることも、また真実なのでしょう。
さて、「欧州が中国より」であるもう1つの例。2015年12月、中国人民元が、IMF・SDRの構成通貨に採用されました。これも「アメリカの意志に反して」「欧州の裏切りによって」実現したのです。
時事通信12月5日 人民元、「外交上の勝利」=日米欧の思惑交錯-IMF第3位通貨に〔深層探訪〕
から引用してみましょう。まず、日本とアメリカは、はっきりと「人民元のSDR構成通貨化」に反対していました。
◇日米、「自由度」に懸念 「元の管理制度には課題が多い」―。米国や日本の財政当局者らは今年半ばまで、このような見解を相次ぎ漏らし、元取引の自由度の低さに懸念を示していた。SDR採用には「貿易量」と「通貨取引の自由度」の2つの水準を満たす必要がある。元は前回2010年の審査で自由度の低さがやり玉に挙げられ、採用が却下されていた。ルー米財務長官らは今年初め、「中国は市場に基づく為替相場を構築する必要がある」と表明し、今回のIMF審査でも不採用に持ち込みたい考えをうかがわせた。
ところが、アメリカ最大の同盟国であるはずのイギリスが、AIIBにつづき、今回も裏切ります。
◇英国は「黄金時代」に期待 しかし、審査は5年前と異なる展開をたどった。決定的な違いは、中国の経済力に魅せられた欧州諸国が早い段階から「元のSDR採用」に前向きな姿勢を示したことだ。特にロンドンの金融街シティーを擁する英国は「中国寄り」を鮮明にした。10月の習主席訪英では、バッキンガム宮殿で晩さん会を開き、キャサリン妃が中国を象徴するような赤いドレス姿で歓待。キャメロン政権は「英中の黄金時代」の演出に力を注いだ。この英中首脳会談でまとまった商談は、中国による英原発投資を含めて総額400億ポンド(約7兆4000億円)。さらに、英国は元のSDR採用への支持を確約し、将来のシティーへの元取引市場の誘致に有利なポジションを手に入れたとみられる。(同上)
イギリスにつづいて、もとから親中のドイツやフランス、その他欧州諸国も、続々とアメリカを裏切った。そして、もはや日米が反対してもどうにもならない状況になっていったのです。
10月のIMF加盟国会合では、ドイツなどの欧州諸国や新興国も、元のSDR採用に賛意を表明。この時点で日米が反対しても、否決には持ち込めない情勢になっていた。(同上)
以上、欧州が、アメリカを裏切って中国についている例を2つ挙げました。
今年も、欧州の大国群は、中国への接近をつづけることでしょう。イギリスの例を見れば明らかですが、中国パワーの源泉は、「金」です。ですから、アメリカが覇権を維持しようとすれば、「中国経済を破壊すること」が非常に重要なのです。
最近のアメリカメディアを見ると、毎日のように「中国経済お先真っ暗」記事が出ています。確かに、中国経済が、多くの問題を抱えていることは事実。しかし、「経済情報戦」の一環でもあるのでしょう。プロパガンダが浸透すると、「それは事実」になる(例:ある新聞が、「A社はヤバい!」と書けば、実際株は下がる)。