難関に合格しなければ自殺?体の中で行われている血液受験戦争とは

2016.02.20
by NozomiK
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私達が生きていくうえで必要不可欠な血液。でも、あまり知らないことが多いですよね。医学博士のしんコロさんが自身のメルマガ『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』の中で、血液の秘密について明かしています。はじめて聞くことばかりで、目からウロコですよ。

Question

血液の秘密を教えて!

shitumon (1)血液の秘密を教えてください。前に腸の内壁がウンチくんのもとになっているということを教えていだだき、凡人が知らないことをいろいろ知っているしんコロさんならではの視線で、書いていただきたいと思います。

 

 

 

しんコロさんの回答

そんな話題が以前ありましたね。ウンチくんは食べカスでできていると思いがちですが、水分を除けば実は一番多いのが不要になった腸の粘膜(15~20%)、ついでバクテリアなど(10~15%)、そして食べカス(5%程度)なのです。

さて、私たちを生かしてくれている血液には多くの秘密がありますが、一見とても無駄に思えるような秘密があります。それは血液中の白血球の一種、T細胞の秘密です。T細胞は例えたら体に侵入してきた病原体と戦う兵隊です。この兵隊は血液中に出てくる前に胸腺という心臓の上あたりにある器官で教育を受けます。ここの教育がとても厳しく、合格するT細胞はたったの2%しかいません。残りの98%は自殺(アポトーシス)してしまうのです。

たくさんT細胞が生まれてきたのに、そのほとんどを殺してしまうなんてなんとももったいない話ですが、これには深いわけがあります。さまざまな種類の病原体に対抗するために、T細胞はそれぞれ病原体に特異的な攻撃性を獲得するようになります。噛み砕いていえば、それぞれの病原体に適した武器を備えたT細胞になるわけです。

でも、病原体に適した武器であるはずが、間違って自分の組織を攻撃するのに適した武器を間違って持ってしまうことがあるのです。そんな危険な武器を持ったT細胞が体の中にいたら危ないので、アポトーシスしてしまうのです。

つまり、98%のT細胞が「危ないやつら」とみなされて不合格者となり、残りの2%が自己を攻撃しない「合格者」として胸腺から出て血液に乗って身体中に広がるのです。たった2%の合格者だけでいろいろな病原体に対応していることから想像できるように、アポトーシスしたT細胞も含めたら膨大な種類の分子に特化した武器を備えることができるのです。

これは利根川進さんがノーベル賞を取った発見「遺伝子の再構成」というメカニズムで行われています。その計算上では、T細胞は地球上にない物質にまで武器を備えているポテンシャルがあるのです。ちなみに、このT細胞の武器の種類はHLA 分子の型と密接な関係があります。前回のメルマガの「女性は男性の体臭から、自分とは違う型のHLA を嗅ぎ分ける」という話題をしましたが、その背景には病原体から身を守るための秘密が隠されていたのです。

image by: Shutterstock

 

 shinkoroしんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」
著者:しんコロ
ねこブロガー/ダンスインストラクター/起業家/医学博士。免疫学の博士号(Ph.D.)をワシントン大学にて取得。言葉をしゃべる超有名ねこ「しおちゃん」の飼い主の『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』ではブログには書かないしおちゃんのエピソードやペットの健康を守るための最新情報を配信。
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