ポニョの舞台を住民が死守。何をどう争っていたのか弁護士が解説

 

広島地裁は、鞆の浦の景観について、瀬戸内海における美的景観をなすもので、文化的歴史的価値を有する景観としていわば「国民の財産ともいうべき公益」としています。そして、景観の恵沢を享受する利益は、私法上の法律関係において、法律上保護に値する、と判断し、景観を侵害する判断は慎重に行われるべきと述べています。

得られる利益についても、調査不足のものが多いと指摘し、項目によっては得られる利益が認められないこともないが格段に効果が増すとはいえない、としています。そして、この事業が一旦完成してしまったら、復元することはまず不可能である、と判断しました。

上記の認定に基づき、県知事が埋立免許を出すことは、法が認めた裁量権の範囲を超えるとして、差し止めを認めました(広島地裁平成21年10月1日判決)。

その後、裁判は控訴され、広島高等裁判所に係属していましたが、県側の方針転換により、計画をめぐる訴訟は終わりました。平成21年(2009年)の住民側勝訴により、各地の開発と景観をめぐる紛争に大きな影響を与えてきましたが、今回景観保護という形で完全に決着がついたことによりさらなる影響を与えることも考えられます。

景観を保護しつつ日常利便性の向上をどう両立していくか、広島県や福山市の手腕に今後も注目が集まりそうです。

 

 

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