シャープも買い叩かれた。なぜ日本企業のM&Aは失敗ばかりなのか?

 

懐かしの人気番組にも世相が

1980年代後半から1990年代初頭がバブル時代。同時期に『世界まるごとHOWマッチ』という「このお城や企業をいくらで買うか」という質問に回答者が答えるクイズ番組が人気を博していた。あの当時、NYのロックフェラーセンターを三菱地所が買収したり、アメリカのコロンビア映画をソニーが買収するなど、さまざまな日本企業が海外の企業を買収した。しかし、その多くは売却されている。あの当時日本はバブルで資金が余っておりドンドン買収していたが、あまりよく調べずに買収していたことなどから失敗も多かった。

今起っているM&Aの潮流と当時とは違い、先ほど述べたように少子高齢化で内需が縮小してきたことに起因して外に出ていかざるをえない状況となっている。そういう意味からいうと、追い込まれた買収という側面もあると思う。その一方で量的緩和による低金利でカネがだぶついているということが起因しているということもあるが、必ずしも成功するかということはわからない。

東京を売ると、アメリカが買える

経済記者として企業も数多く取材してきたが、バブルから現在までの印象的な買収劇として失敗例の方が非常に話題になっていたので印象に残っている。いくつか紹介すると古河電気工業が2001年、2,800億円でアメリカの光ファイバー企業(ルーセントテクノロジー)を買収し、光ファイバー市場で世界2位のシェアとなった。しかし、買収直後から売上が激減し最終的に当初の5分の1の売上になった。結局相手の厳しい状況であることを買収前に見抜くことができなかったのである。

その後、天野望・古河電気工業取締役執行役員(当時/現取締役 兼 執行役員常務)は当時の事を振り返り、以下のように答えている。

バブルの最中に「これはバブルだ」と気づくのは難しい。買収した後になって、しみじみとわかりました。

 

資産査定のために渡米した際も、ルーセントの最高財務責任者(CFO)は約束の時間に遅れてやって来た。たしか休日でした。「海水浴に行っていたんだ」なんて、余裕の表情を浮かべていたのが印象的だった。
(2011年12月11日/日経新聞掲載抜粋)

古川電工は2期連続で特別損失を出し、高い勉強代を払ったが2006年にはこのセグメントを黒字化した。

また、NTTコミュニケーションズは2000年に、6,000億円でアメリカのネット会社「ベリオ」を買収したが、瞬く間に8,000億円の巨額損失を出した。当時は大変だったが、その後購入したネットの基幹網が活きてきたので損はしていないといえる。

さらに例を挙げると、コスモワールド(インターナショナルイーシー/2014年倒産)が米「ペブルビーチ」を買収。この会社は土地売買で事業を拡大し大きくなった会社だったが、結局維持できなくなり売却した。この当時、不動産業が圧倒的に儲けていた時代。「東京を売ると、アメリカが買える」と揶揄されるほど不動産業の儲けがあった。

民族の違いに象徴

結局失敗した例がかなり多いのだが、これは何かというとやはり日本人はM&Aに慣れていないといえる。日本人は農耕民族で、コツコツ真面目に稼いで大きくしていくというのが得意技である。それに対してアメリカは狩猟民族。長続きさせるというより、うんと良くなった段階で高値で会社を売り、また次の会社を買うということに慣れている。日本はそういったことに慣れていないのにいきなりM&A時代に入ってしまい、日本もM&Aをしないと伸びしろがないと会社や事業を買い始めたが、結局日本企業は失敗が多かった。これからどうするのかということがカギ。

これからはもっと良く調べてM&Aをやるということが第一。基本中の基本である。おカネがある、周りの評判が良いからといって飛びつくのではなく、技術、人材、企業がきちんとしているのかどうかという事を丁寧に調べる必要がある。

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