【パナマ文書】日本政府がタックスヘイブン対策に消極的な理由

 

日本の金融機関もケイマン諸島などに設けた特別目的会社を使い、証券化商品を売って、しこたま儲けている

日本銀行の「直接投資・証券投資等残高地域別統計」(2013年度)によると、日本からケイマン諸島への投資額は55兆円にのぼっている。たった1つのタックスヘイブンについてもそれだけ莫大なマネーが日本から流出しているのだ。にもかかわらず、日本政府は大企業に対する優遇税制を強めるためか、フランスやドイツにくらべ、タックス・ヘイブンとの租税条約情報交換協定の締結に消極的な姿勢をとり続けてきた。

自国のグローバル企業の世界競争を税負担軽減で有利に導きたい一方で、国の税収も確保したいというのが、財務当局の悩みだ。経済のボーダレス化は進むが、国境は厳然として存在する。

とどのつまり、タックス・ヘイブンとは無縁の国民に消費増税などのかたちでしわ寄せがくる。

金融資本、多国籍企業、そして彼らと結託して私腹を肥やす政治権力者が欲のおもむくままにふるまう限り、国による税の差を利用したグローバル時代の錬金術を容易に手放そうとしないだろう。このままでは、特権階級に属さない者は、何も知らされないまま、タックスヘル地獄にいつまでも耐えていかねばならない

この不条理をなくするため、法の抜け穴を塞ぎ、オフショア利権を解体する必要がある。各国が協力し合い、税務情報を共有するネットワークづくりを進めてゆくべきだ。

その意味でもICIJのジャーナリストたちの活動には頼もしさを感じる。世界のメディアがもっとこの問題を取り上げねばならない。マネーゲームに支配されつつある各国政府を覚醒させねばならない。

image by: Shutterstock

 

国家権力&メディア一刀両断』 より一部抜粋

著者/新 恭(あらた きょう)
記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。
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