スタバだけじゃない。実は知る人ぞ知る「BARの街」シアトルの魅力

 

知覧醸造の「ほたる」を使用したカクテル モヒートよりもさっぱりマティーニは、コンベンショナルなマティーニよりも呑み口が軽い。ジンのクリアな素養にベルモットのフレッシュさも加わり、まだ明るい時間に呑むには打ってつけである。色はヴェスパー・マティーニのように濁っているが、ずっとフレッシュなフィニッシュに仕上がっていた。

私にとってショート・カクテル2杯はそれほど大きな問題ではない(もちろん、日本よりも相当グラスはでかいのだが…)。しかし、クリステンセン氏は、さすがトップ・バーテンダー。強めのカクテルが続いたので「リフレッシュメントだよ」と、さらに一杯を差し出してくれた。いや、これが実にフレッシュで、目が覚める。「何が入っているか判るかい。これだよ」とさらにドンと出される。

知覧醸造の黒糖仕込み「ちらん ほたる」。ラベルに「Fire fly」と表記し、しっかり輸出している知覧醸造にも感心するが、それをしっかり仕入れ、さっと日本からやって来た呑み助に披露するクリステンセン氏にも感心しきりだ。

ちらんを使ったカクテル

クリステンセン氏が「こんなもんもあるよ」とボトルを並べ始めると、なんとそのひとつのラベルに氏の顔写真が…。これはさきほどのBrovo Spiritsが企画した「プロジェクト・アマーロ」に参加した際のもの。

クリステンセン氏がラベルのボトル

アマーロは、イタリアの薬用酒。イタリア産ビター・リキュールの総称で、かなり多くの製法と配合があると言われている。主にアロエ、アニス、ニガヨモギ、シナモン、カルダモン、ニガアザミ、キナノキ、クミン、コリアンドロ、ウコン、ダイオウ、アーティチョークなど実に多様な薬草が使用される。

シアトルでそのアマーロを作るプロジェクトに13人のバーテンダー、ミクソロジストが参加。商品化され、そのひとつが氏の顔がラベルとなっている「#11」。13種類の中でも#11は特に人気の一本と、地元のニュースメディアでも賞賛されていた。

クリステンセン氏のカクテルを3杯飲んで気持ちよくなった私は、シアトルのダウンタウンに夢見心地で戻る。シアトル一軒目から素晴らしいバーテンダーに巡り会ってしまった。帰国後、#11とグレープフルーツのリカーを使用した「EU238」というクリステンセン氏のオリジナルがあることを知った。後の祭りだ…。また、彼を訪ねる旅の機会がすぐに訪れることを祈る。

クリステンセン氏自身、日本のバーテンダーにも非常に敬意を抱いており「いつかは日本に行きたい」と熱心に語っていた。日本のバーテンディングを取り入れた時、氏のカクテルも、きっと新たなフェーズへと発展するかと思うと、ぜひ来日を実現して欲しいものだ。

MONSOON EAST
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image by: Shutterstock

 

たまさぶろの人生遊記

著者/たまさぶろ
駆け出し週刊誌記者から CNN 本社勤務ディレクター、全国紙との業務提携を果たした大手ネット・メディア・プロデューサーなどメディア流浪者であり、BAR 評論家・エッセイストが、酒の話のみならず、1990年代に過ごした NY 時代の創作などいくつかのチャレンジを含めた「人生遊記」をお届けする。
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