モンスーン・イーストには、ランチとディナーのブレイクもなく、取材時の夕刻も営業中。私がカクテル片手に「うーん」とか「むむ」とか唸っている間にも、次々とお客がやって来る。
カウンターの奥に座ったのは、70歳後半と思われる老夫婦。すると、ご主人がマンハッタン、奥さまがウォッカ・マティーニをオーダー。陽の高いうちから、のんびりとハードなカクテルを傾け始める。うむ、この閑静な街で17時からこの年齢の夫婦がカクテルを嗜む…ぜひ私自身もそんな人生を送りたいと羨望の思いで眺める。
奥さまがあまりにも美味しそうにウォッカ・マティーニを呑んでいるので「ウォッカとジンと、どっちのマティーニがお勧めか」とクリステンセン氏に訊ねると「もちろん、ジンさ」と即答。ジン・マティーニをオーダーする。
するとドンとカウンターに出してくれたのが、シアトルのローカルジン、「Copperworks」とラベルされたひと品。あとで調べるとシアトル・ダウンタウンのウォーターフロントに位置する蒸留所で、まだ創業間もなく、バーボンではなくシングルモルト・ウイスキーを生産すべく操業しているが、その前にジンおよびウォッカを作って、日々を凌いでいるらしい。癖のない素養の良さそうなジンだ。これに「Brovo Witty」という、州内のクラフト・ドライベルモットを使用し作ってもらったマティーニが写真の通り。
このベルモットを作っている「Brovo Spirits」は、近隣の「ウディンヴィル(Woodinville)」にある蒸留所。現在、ウディンヴィルには急速に蒸留所が増えており、私も数日後に足を運ぶことになる。