スズキの小会社にあたる「マルチ・スズキ」が、インドで一人勝ちを続けています。ホンダでもトヨタでもなく、スズキがインドの人たちに愛される理由とは?
インドで一人勝ちを続けるマルチ・スズキ
世界的に有名な日本の自動車メーカーを聞かれたら、皆さんはどの企業の名前を挙げますか?
トヨタ、ホンダ、それとも日産?
でも、それがインドだったら、まず挙げられる名前は「スズキ」です。
インドにおけるスズキの乗用車生産販売子会社である「マルチ・スズキ」の勢いは留まるところを知りません。
ホンダのインドでのシェア率は5.4%、トヨタは4.6%に留まっているのに対して、マルチ・スズキの2015年4〜12月のインド市場での自動車メーカーシェアは、なんと47%と、全国シェアの約半分。
過去5年間連続で年間100万台を売り上げ、2020年までに年間200 万台の販売を目標にしています。
インドのユーザーを魅了し続けるマルチ・スズキ。
一体何が、インドの人たちの心を掴んでいるのでしょうか?
マルチ・スズキの人気の秘密は?
どうやら、マルチ・スズキの人気の秘密は「小型車」にあるようです。
インドでは近年、小型車がマーケットでのトレンドになっています。
理由はいろいろ考えられますが、都市部の過密化と、それに伴う駐車スペースの減少は、小型車人気に強く関係していると考えられています。
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たとえは、インド最大の都市、ムンバイでの2014年11月の車両数は約24万台。
過去20年の間に208%増加しています。
一日当たりの新車登録数は450台となっており、政府は少なくとも、あと5万台の駐車スペースが必要であると予測しているとか。
また、これまで人気のあったハッチバックやセダンとは違ったコンパクトなデザインが、ユーザーには新鮮に映ることや、舗装されていない道路が依然多く、くぼみの多い車道でも安定した走りが可能であるSUVが好まれる傾向にあるようです。
厳しい価格競争と競合
もちろん、マルチ・スズキに競合がいないかというと、そうではありません。
インド市場シェア率17.3%で、2位の座を保持する韓国の自動車メーカー、ヒュンダイは、同じように小型車の販売を強みにしています。
しかし、4月21日、ヒュンダイのCEOは、インド市場の小型車の価格競争からは身を引き、今後は品質に焦点を当ててシェアを伸ばしていく方針を発表しました。
「多くのメーカーが小型車を3〜4ラックルピー(=約50万〜67万円)で販売しているが、ヒュンダイの小型車の平均価格は7ラックルピー(=約110万円)。我々は、インドで繰り広げられている価格競争に、これ以上参入するつもりはありません」
ヒュンダイはCreta SUVを3月までに6万8000台売り上げ、今年中に66万5000台の売り上げを目標としています。
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インドでは空気汚染が深刻な問題となっているため、モディ政権は国民にディーゼル車から、ハイブリッドや電気自動車の購入を後押しする動きも見せています。
車が日常生活において大きな役割を担うようになってきた人口13億人の大国、インド。
今後、各国の自動車メーカーの重要なマーケットとなっていくのは火を見るよりも明らか。
インド市場での、日本の自動車メーカーの活躍に大きな期待がかかっています。
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source by THE TIMES OF INDIA/ Hindustan Times/ Business Standard/ THE WALL STREET JOURNAL/ THE ECONOMIC TIMES
文/長塚香織