「2年前から警戒していた」専門家が語る熊本地震が予測困難だった訳

 

リアルタイム解析で地震予測は大きく進化する

さて、今回の件を振り返ってみても大いにわかるのが、地震の予知・予測において“発生時期”を推定することの難しさ。この高いハードルを越えるべくJESEAが現在進めているのが、最新型の電子基準点を活用したリアルタイム解析による地震予測だ。

JESEAは去る15年に、箱根や富士山にほど近い神奈川県小田原市と大井町の2箇所に、自前で電子観測点を建設。また今年3月に報じられた通り、NTTドコモが持つ各地の携帯電話基地局にも、新たに電子観測点が建てられることになり、2016年度内には全国16か所への設置が完了する。

NTTドコモの基地局に設置される電子観測点に関しては、北海道えりも町や和歌山県串本町といった岬がある地域や、日本最大級の断層系である中央構造線が通る長野県茅野市など、地表の変動を監視するにあたってのキーポイントとなる場所が選定された。また今年5月末にG7伊勢志摩サミットが開催される三重県志摩市にも、すでに設置されている。

現在建てられている電子基準点は、もちろん最新式のもの。例えばアンテナは、携帯電話基地局に併設されるということで、LTEアンテナから発する電波とは一切干渉しない、最新鋭のものが採用されているという。

これらの新しい電子観測点が持つ最も大きな強みが、各地点のGPSデータを1秒ごとに得ることができ、そのデータがリアルタイムでJESEAへ送信される点だ。

国土地理院が建てた従来の電子基準点によるデータは、現在1日平均のものが計測から2日後に無料公開されている。JESEAの地震予測もこのデータを活用しているのだが、データ取得にタイムラグがある点もさることながら、1日平均のデータということで瞬間的な大きな動きが平均化されてしまい、そのため兆候として捉えにくくなってしまうこともあるという。

それに対し最新の電子観測点なら、地震発生の予兆となるような大きな地殻の動きも瞬時にキャッチ可能。そのため、課題である地震発生のタイミングに関する予測も、その精度が大いに上がることが期待されている。

現に今回の震源近くにある城南という場所の電子基準点では、前震が発生した4月14日に約6cmという著しく大きな隆起があり、翌15日以降は大きく沈降するといった、気になる動きがあったという。この14日の隆起が地震発生の前のものか後のものかは、データが国土地理院による1日平均のものなので、特定ができないとのことだが、もし当地に最新型の電子観測点が立っており、なおかつこの動きが地震発生前のものだったとすれば、この動きが“地震発生が間近であることの前兆として捉えることができた可能性があったという。

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今のところ新しい電子観測点は、自前で建てた2基、NTTドコモの基地局に順次設置が進んでいる16基ともに、リアルタイムデータを用いた実証研究が本格的に始まるところという、いわば試運転の段階。ただ、今後これらが地震予測の実戦に投入されれば、地震が発生する場所とともに時期も推定できるという、より高度な地震予測の実現に大きく前進することになりそうだ。

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 文責/MAG2NEWS 編集部

 

0001592103c-e14256137241481『週刊MEGA地震予測』
著者:JESEA(地震科学探査機構)
測量学の世界的権威である東京大学名誉教授・村井俊治氏による、測量工学的アプローチに基づいた地震予測を毎週配信。2014年に発生した震度5以上の地震を全て予測するなど、高い予測的中実績を誇り、テレビ・新聞・雑誌等での紹介も多数。
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