その男、なぜ戦場からバグパイプ奏者へ? 共通点は「相対音感」

 

戦場から音楽へと続く不協和音

カトケンが選んだ楽器は、4つの音が常に重層音として出続けているバグパイプ。学校教師氏は、バグパイプの特徴もよく理解していて、納得してくれた。

「なるほど、戦場から音楽へ、というところに、意外性ではなく連続性を感じたんですよ。もともと連続性を感じていたのではなく、あなたの言葉を聞いて直観的に連続性を感じたんです」と。これまで、戦場から音楽へ、という点で、意外性を言われることがあり、その意外性を売りにもしてきたが、連続性というか類似性を感じるという観点の人もいたんだということが妙に嬉しかった。

音楽世界で生きていると話すと、キーやコードなどの音程が合っていることを基本のキとし、ズレているものに対しては「ダメ」とか「悪い」とする傾向が強い。しかし、11年ほど音楽をやってきているカトケンの耳には、キーやコードの合っている音は「まあ、悪くはないかもね」程度でしかなく、特別な感情を持てない。おもしろみがない。テンションが上がらない。少なくとも、戦場の音のように「この不協和音を最後まで聴けるなら死んでもいい」と感じさせる魅力には及ばない。

戦場の砲弾飛翔音は、キーもコードも合っていない。その合っていない音は、人々を震え上がらせる力を持っている。一生の記憶として脳裏に残る。似た音を聞けば記憶がフラッシュバックする。そういう音を奏でられるのが歴史に残る最高の音楽家だったりして・・・。

戦争と音楽といえば、第二次大戦中、米軍は、暗号解読チームに、海軍音楽隊の演奏者をたくさん投入して良い成果を上げている。暗号解読の能力と音楽の能力にもかなり連続性があるといわれている。正しいといわれている音程やテンポやハーモニー、Hzなどの中だけで音楽家が才能を限定されて窮屈に生きてるのはもったいない。

 

異種会議:戦争からバグパイプ~ギャルまで』より一部抜粋

著者/加藤健二郎(建設技術者→軍事戦争→バグパイプ奏者)
尼崎市生まれ。1985年早稲田大学理工学部卒。東亜建設工業に勤務後、軍事戦争業界へ転職。1997年より、防衛庁内局OPL。著書は「女性兵士」「戦場のハローワーク」「自衛隊のしくみ」など11冊。43才より音楽業に転向し、日本初の職業バグパイプ奏者。東長崎機関を運営。自分自身でも予測不可能な人生。建設業→戦場取材→旅行業→出版→軽金属加工→軍事戦争調査→探偵→バグパイプ奏者・・・→→次はなに?
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