そのような事例を見て、視察に来た松岡社長は、お客様のニーズにただ応えるのではなく、「お客様が本当に望んでいるもの」をうまくつかみ提供することが大事なのだということを教わった。
では、自分たちの商品である卵の場合は、お客様が本当に求めている要望は何なのか。
生産される卵は、大きかったり小さかったり色が濃かったり薄かったりといろいろだから、通常は大きさ別に選別して、L、M、Sと分けてパック詰めで販売するのが普通である。
当時はバブルの時期で過剰包装が普通だったが、松岡社長は思い切って、ふた無しの段ボールにサイズ関係なくバラで卵を詰め込んで、「3kg入り朝取りたまご」という箱売りをしようと考えた。
その松岡社長の考えに、社内からは「絶対に売れない!」「たまごが割れてしまう!」と、思いっきり猛反対にあったが、松岡社長は反対を押し切って販売を開始した。
すると、段ボールにバラで詰めたたまごは、お客様がそっと大事に抱えて持ち帰るため、ほとんど割れたという問題は発生しなかった。
そして、この段ボール入りのたまごは、現在1日に1,000箱も売れる日もあるほどの同社最大のヒット商品となった。
熊本県菊池市の山の中の店にまで、熊本市内を中心に、福岡、山口からもドライブを楽しみながら立ち寄って、20箱以上も買い求める人がいるほどである。
たまごの品質を伝える気持ちは大きくても小さくても一緒なのだから、規格に合わせて細かく選別するのではなく、良いたまごは全部同じ箱に入れればいい、と松岡社長は考えたのである。
つまり、お客様の本当の要望は「整然とパック詰めされた見かけだけを重視したたまごが欲しい」のではなく、「新鮮で美味しいたまごが欲しい」というシンプルなことだったのだ、とコッコファーム創業者の松岡義博氏は述べている。