菊池桃子「PTA任意加入」発言に警鐘。ゆとり教育の二の舞を懸念

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女優の菊池桃子さんが1億総活躍国民会議の場で「PTAの加入を任意にすべき」と発言したことが話題となりました。「PTAという組織が共働きの家庭が増加している時代背景にそぐわない」として、この発言に賛成する声も多いようです。しかし、メルマガ『武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』の著者である中部大学の武田教授は、この発言に対して「安易な評論」と批判。さらに今回のような「思いつき」的な発言は「ゆとり教育」の時と同じ轍を踏むだけだと警鐘を鳴らしています。

とある女優の「PTAは任意加盟にすべき」発言について

最近、ある女優が「PTAは任意加盟にするべきだ」と国家の委員会で発言し話題になっています。この問題も著者には安易な評論と思います。

かつて明治時代など国家がその形を整えていく時代には、多少、個人を犠牲にして「国家のための人材」を育成します。その時には「一定の学力、体力になること」が目標とされますから、優れた子供にとっては良いのですが、特徴のある子供は全部を満足する事が困難になり、落ちこぼれなどが起きます

本来、教育は子供のために行うのですから、「合格点」というそのものが奇妙なのです。だから国は発展するとPTAが実権を握り、「子供のための教育」を先生に依頼します。現在の日本はまだ発展途上にあり、文部省(政府)が教育方針を決め、先生に伝達して、それを行わせるという形をしていますし、PTAはまさか自分達が教育内容を決めるはずはないと思っていますから、つまらない事を議論したり、派閥が出来たりしています。

でも、基本的には政府は「国家のための人材」を育成しようとし父母は「子供のための教育」を望みますから、自ずからその目的は変わります。だからPTAは今後の日本にとって極めて重要なのです。

先ほど登場していただいた女優が、今後の大きな教育の流れを理解し、子供の教育より明治時代のような国家のための教育を望んでいるので「PTAの任意加盟」を主張されたのならそれはその人の意見なので良いのですが、「現在のPTAに問題がある」として歴史をバックさせるのでしたら、それは「悪い状態を追認して、さらに悪い方向に行く」と言うことになります。

現代の日本はあまりに「思いつき」で、しかも自信たっぷりに発言する人が多く、かなり混乱した状態です。教育関係では1972年に「ゆとりの教育」という方針が出され、文部省を中心としてかなり慎重に検討された後、1990年代には教育界ばかりではなく、政界、財界、産業界、知識人、マスコミ、市民団体などほぼ全日本でゆとりの教育をしようということになって、1999年に法律を改正してゆとりの教育をはじめたところ、成績が悪くなったということで10年も経ないうちに元に戻ってしまいました。

この被害をもっとも強く受けたのはもちろん子供たちで、「ゆとり世代」などと言われて差別を受けています。勉強時間を減らし、考えたり、子供同士の時間をとれば、詰め込み教育的な知識は不足するのは当然です。その代わりにまさにゆとり教育のような混乱を招くように人材は減ってくるでしょう。国際的な「学力テスト」の成績が悪くなるのは予想の範囲だったのにもかかわらず子供たちにその犠牲を強いたこと、それを私たち大人は強く反省してしっかりした議論ができる(煽られない)社会を作る必要があると思います。

image by: Shutterstock.com

 

武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』より一部抜粋

著者/武田邦彦
東京大学卒業後、旭化成に入社。同社にてウラン濃縮研究所長を勤め、芝浦工業大学工学部教授を経て現職に就任。現在、テレビ出演等で活躍。メルマガで、原発や環境問題を中心にテレビでは言えない“真実”を発信中。
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