経営のカリスマ・松下幸之助が語る「会社を大きくする人、潰す人」

 

この点については、おもしろい話が残っています。創業間もないころ、近所に松下と同じように電気屋を始めた人がいました。結局、その人は会社を駄目にしてしまうのですが、数年後、再会したときにその人が幸之助さんに、

「私も一所懸命仕事をしたが、どうも思うようにいかなかった。たまたま少しうまくいきかけると、売った先が金をくれなかったり、頼りにしていた工員が辞めたりして、挫折してしまった。同じように商売を始めた君が、何の支障もなく発展していくのが、不思議だ」

それに対して、幸之助さんはこう答えています。

君ほど熱心にやっていながら、なお仕事が成功しないのが、私には不思議だ。商売というのは大小の差があってもやっただけは成功するものだと思う。

 

よく世間では商売だから儲けるときもあれば損するときもある、得したり損したりしているうちに成功していくというが、自分はそうは思わない。

 

絶対に損をしてはいけないのである。

 

商売というのは真剣勝負と一緒だ。首をはねたり、はねられたりするうちに勝つというようなことはあり得ない。活動すればそれだけの成功が得られなければならないのだ。

 

もし、それができなかったら、それは環境でも、時宜でも、運でも何でもない。経営の進め方に当を得ないところがあるからだ。それを『商売は時世時節で得もあれば損もある』と考えるところに根本の間違いがある。

 

商売というのは、不景気でもよし好景気であればなおよしと考えなければいけない。商売上手な人は、不景気に際してかえって進展の基礎を固めるものだ」

このエピソードは幸之助さんの企業経営というものに対する厳しい姿勢をよく表していると思います。

山下俊彦(松下電気相談役)

『致知』1989年8月号掲載

image by: TK Kurikawa / Shutterstock.com

 

致知出版社の「人間力メルマガ」
京セラ・稲盛和夫氏、サッカー日本代表・岡田武史氏など、人間力を高める月刊誌『致知(ちち)』に登場した各界一流人の名言や仕事術など、あなたの「人間力アップ」に役立つ情報を配信中。
<<登録はこちら>>

print
いま読まれてます

  • 経営のカリスマ・松下幸之助が語る「会社を大きくする人、潰す人」
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け