小池百合子氏が大臣時代にかけた、一秒の「ワン切り」電話の意味

 

さて、守屋の話をもう少し続けよう。安倍晋三とのからみがあるからだ。

守屋は「断じて困る」と反発し官邸に直訴した。同年8月13日、小池が塩崎官房長官に面会すると、塩崎は「次官人事はたとえ総理が了解していても人事検討会議を経て行うものだ」と小池の人事案に否定的な態度を示した。

小池は、安倍首相にすがったが、その返事はつれなかった。「組閣後の人事検討会議で決める。やっぱり人事案が漏れたのは問題だよね」

官房長官と同じ言葉を繰り返すのを聞いて、私はがっかりした。…私は筆書きで用意した進退伺いを置いた。すると安倍総理は、驚いた表情を見せた後、急に悲しそうな顔に変わった。「辞めるなんていわないでください。お願いだから」と、困惑した声が返ってきた。
(同)

守屋は結局、退任が決まった。ただし、後任は小池の推す人物以外に差し替えられた

小池は内閣改造をひかえた8月24日、インド・ニューデリーのホテルで記者団に「私は辞めるといっているのよ、わかる?」「総理には続投しないことを申し上げております」と言明し、あっさり安倍首相を見限った。

安倍政権が崩壊する可能性が高いことは小池には分かっていた。内閣改造は失敗に終わる。自分は泥舟に乗らないという判断だった。

一度は見限った首相、安倍晋三が再び政権を握った。2012年総裁選で石破茂側についた小池。それからの安倍の態度は、以前とは全く異なっていた。

稲田朋美ばかり重用して、小池を冷遇してきた安倍への反発心が、都知事転向の背景になかったとは言えないだろう。

今後、自民党都連に気を遣わざるを得ない安倍官邸と、自民党籍を抜かない小池がどのような距離感でつきあっていくのかが、新都政の行方を左右する重要なカギだ。

小池の政治の進め方には、女性らしいストレートさがある。それが男社会でしばしば摩擦を起こす。守屋の人事をめぐる一連の騒動はその典型だが、それが都庁、都議会でも行われるようなことがあると、下手をすれば都政の停滞につながってしまう

政治の世界における男のジェラシーは女の比ではないといわれる。内田茂はもちろん、顔に泥を塗られた石原伸晃や、関東軍参謀のような強硬派、萩生田光一が、新都知事にどんな顔を向けるかはわからないが、とりあえずは世論の動向や間合いをはかるための時間をとるだろう。

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