陛下の生前退位、最大の配慮は「宮中祭祀のスムーズな継承」なのでは?

 

この大掛かりな儀式を、多少簡素化するにしても確実に継承するとして、最善の方法は「実際の経験者が指導する」ことです。例えばですが、宮内庁には1989年から90年当時の儀式の経験者はほとんど残っていないと思われます。ということは、今の両陛下が当事者かつほとんど唯一「ノウハウを知っている」存在となります。

仮に生前譲位とするのであれば、今の両陛下が手取り足取り指導して、新帝と新皇后に宮中祭祀と諸行事の継承を行うことができるわけです。これは、非常に大切なポイントです。

また祭祀の中で、著しく現代の日本社会の常識に反するような部分があり、できれば世代交代の際にその点は見直すということがあるにしても、仮に新帝の世代が独断で行うよりは、太上天皇、皇太后と相談しながら進めたほうが、周囲の理解も得やすいのではないでしょうか。

ちなみに、今回の「お言葉」については天皇による政治への介入であるという批判があるわけです。ですが、仮にその本意というのが、宮中祭祀の継承にあるということであれば、これは政教分離原則の現在の宮内庁と皇室の位置づけから考えれば、その「私的な部分」に関する懸念から出たこととなります。

政教分離の原則、公私混同を避けるということで言えば「私的な宗教行為の問題」ということになり、そうであるのならば当事者には発言権はあるし、憲法違反にはならないという解釈も可能ではないでしょうか。

それ以外の公務に関する部分については、この「お言葉」というのは、内閣の助言と承認のもとに成されたという理解でいいのだと思います。また、そうでなければ、内閣と宮内庁が憲法違反をしていることになります。 

image by: Attila JANDI / Shutterstock.com

 

『冷泉彰彦のプリンストン通信』より一部抜粋
著者/冷泉彰彦
東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは毎月第1~第4火曜日配信。
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