あの「9.11」から15年。日本人が語る「あの日、私が見た異様な光景」

 

アメリカ同時多発テロから15年の歳月が経ちましたが、今もあの日のワールドトレードセンターに飛行機が突入する映像は世界中の人々の胸に焼き付いて離れません。メルマガ『たまさぶろの人生遊記』の著者・たまさぶろさんは、まさにあの日、ニューヨークに向かう飛行機の中にいました。普通では考えられない事態の渦中で、たまさぶろさんの見たものとは…?

9・11から15年

「たまさぶろの人生遊記」第79号は、9月12日の配信。

実は15年前の9月12日、私はチャーターしたリムジンに揺られ、デトロイトを出発。その日の夕刻、やたらときなくさい臭いで充満したニューヨーク市はマンハッタン島のタイムズスクエアに降り立った。まだ夏も終わりきらないと言うのに、焦げた臭い空っ風が吹き、ふだんは観劇や観光客で黒山の人だかりとなっているスクエアには人影もまばらだった。東京・銀座四丁目がこんな光景だったら、日本人はどう思うだろう。

ニューヨークに向かう飛行機の中で最初の異変に気づいた目の前の大スクリーンに映し出される航路の機影がエリー湖の上空ですでに三周も旋回していた。最初に浮かんだのは、自身の乗った機がハイジャックされたという予測だった。道中、ちょっと会話した前席に座るブルックリン野郎に声をかけた。「まずいハイジャックされたのかもしれない」。二人でスチュワーデスを呼ぼうとボタンを押したが、誰もやって来る気配がない。あまり大騒ぎするとパニックになるのではないかと、ブルックリンとひそひそと話をしていた。

すると唐突に機長からアナウンスが入った。「飛行機が二機激突しニューヨークのツインタワーが倒壊した…」と。ブルックリンと二人で言いあった。「いくらなんでもありえない。情報が錯綜し過ぎだ」。

しかし、次のアナウンスは「管制官の指示により当機は今から緊急着陸します」だった。一応、全日空のパイロット試験を受けた経験がある程度の私にとっても、その動きはまさに「急降下」であり、少々肝を冷やした。搭乗した航空機があれほど急降下した経験は他にない

「この近所なら、シカゴかクリーブランドに降ろしてくれ」…私の呑気な願望に反し、デトロイト空港に着陸した。デトロイトは、観光向きでも生活向きでもない工業都市である。まいったな。そして、機は空港のエプロンに着けられたものの、まったく飛行機を降ろしてくれる気配もない。考えてみれば当たり前だ。アメリカの上空を飛んでいた飛行機が全機、ほぼ同時に地上に降ろされ、空港側としてはそれだけ大勢の乗員を入国させる準備も整っていない

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