翌13日、ホテルを出るとキャンドルを持った人々がみな路上に出ていた。ネットで拡散されたらしく、キャンドルを掲げWTCの方角に祈りを捧げるためだった。私も黙祷した。
なにしろニューヨークまで辿り着いたものの、空路が再開されるメドはまったく立たず、今度はマンハッタンから脱出不能という缶詰状態になった。
私もニュースの現場を去って久しい。しかし、ひょっとしてこの体験がなければ、私自身書くこと、つまり表現することを、現場を去った直後に止めていた可能性もある。未だにこうして駄文を書き連ねているのも、この時期の体験が大きく寄与している。
9月11日同様、毎年9月12日がやって来ると、このマンハッタンに辿り着いた時の出来事を思い起こす。改めて、9・11の犠牲者に向け、合掌。
著者/たまさぶろ
駆け出し週刊誌記者から CNN 本社勤務ディレクター、全国紙との業務提携を果たした大手ネット・メディア・プロデューサーなどメディア流浪者であり、BAR 評論家・エッセイストが、酒の話のみならず、1990年代に過ごした NY 時代の創作などいくつかのチャレンジを含めた「人生遊記」をお届けする。
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