ともあれ電事連は、泉田の知事選撤退表明を受けて、さぞかし勝利感にひたったことだろう。知事選撤退となれば、泉田は結果として、原発推進勢力の圧力に屈したことにならないか。いままでなんのために踏ん張ってきたのか。
前回選挙で泉田を支援した自民も公明も、こんどの選挙では別の候補者を応援するかまえを見せている。だからといって、勝ち目がないわけではない。電事連からカネを渡されたジャーナリストらによる「変人キャンペーン」に煩わされてはいても、いぜんとして、泉田は人気のある知事なのだ。
かつて大阪府知事だった橋下徹が、関電大飯原発の再稼働に反対していたにもかかわらず、突如として容認に転じたが、まさか彼と同じように、怖気づいてしまったとは、思いたくない。
泉田知事は新潟日報の報道を知事選撤退の理由にしているが、そのキャンペーン報道の背後にうごめく「モンスター」をその身に感じているのかもしれない。
地域に同化するあまり、カネとしがらみに搦め捕られている首長が多いなか、既得権勢力におもねることもなく原発再稼働に異を唱える数少ない知事である。
原発再稼働を一気呵成に進めたい電事連ならびに、その「虜」に再び成り下がった原子力規制当局の「天敵」ともいえる知事がこのまま退場するなら、福島原発の事故後に根治手術を施すべきだった日本の病巣はますます広がってしまう。
民進党は候補者を出すのかどうかまだ決めていない。この状況のままでは原発推進派の知事が誕生する可能性が高い。新潟県民はそれでいいのだろうか。
image by: 泉田裕彦 Twitter
『国家権力&メディア一刀両断』 より一部抜粋
著者/新 恭(あらた きょう)
記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。
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