原発に反対する数少ない新潟知事に、「出馬」を断念させた魔の手

 

筆者が気になるのは、独自ネタとはいえ、新潟日報はなぜこれほど泉田県政批判を執拗に続けるのかということだ。そんなにニュースバリューのある記事だろうか。

泉田自身が悪事をしでかしたとか、取り返しのつかない失政をしたとかいうことではない。一義的には、お粗末な取引で損失を出した国際海運や、パナマ社の社長が責任を負うべきであろう。

新潟日報の記事にはこうある。

県は国際海運の約65%の株を押さえる大株主で、他の出資者とは全く異なる。株主総会を通じて国際海運を支配可能であり、知事は「親会社の社長」と同様の立場にある。

そういう理屈も成り立つかもしれない。が、県政全般を見なければならない知事が、国際海運の「親会社の社長」のごとく、特別この事業に肩入れすることがはたして県民にとって好ましいのだろうか。市が出資する三セクとはいえ、会社の代表に事業を任せるのが普通だろう。

知事には仕事に優先順位をつけ、重要度の高い政策に取り組んでもらいたい。泉田知事が福島第一原発事故のあと、一貫して、柏崎刈羽原発の安易な再稼働に抵抗する姿勢を示し続けていることは、原発の立地する地域の首長のありようとして大きな意味がある。

電事連や資源エネルギー庁を核とする「原子力ムラ」の圧力をはねかえして、地域住民の安全確保を重視する立場に居続けることが、どれほど大変であり、保身の観点からは危険きわまりないことか、という認識を、我々は持っていなければならない。

泉田知事自身も2013年9月、フリージャーナリストも参加できるメディア懇談会で、「福島県の佐藤栄佐久前知事のようになると感じたことはありますか」と質問され「感じたことはあります。車をつけられたときはやはり怖かったです」と語っている。

正論を吐く人間は嫌われるという。たしかに泉田のような融通のきかない知事は、柏崎刈羽原発の再稼働で利益を得る電力会社などの企業群や、その利益の配分にあずかる政治家、官僚にとっては一刻も早く消えてもらいたい存在であるに違いない。

だからこそ、新潟県民にとっては、自分たちの側に立ってくれるかもしれない稀有な知事であり、支持率も高いのであろう。

そういう知事を持つ自治体の地元紙が、一つの失敗をあげつらって執拗に批判記事を繰り返し掲載し、追い落としをかけるような報道姿勢を続けてきたのだ。

新潟日報には、原発再稼働に対する報道機関としての姿勢が問われるという認識があるだろうか。

もし、「東京電力の広告は今年5回掲載されている」という泉田知事の指摘が示唆するように、広告収入に占める東電のウエートの大きさや、電力会社の莫大な資材調達の恩恵に浴している企業群とのつきあいのうえから、泉田知事バッシングに及んだのだとしたら、ジャーナリズムの自殺行為でありもはや救いがたい

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