原発に反対する数少ない新潟知事に、「出馬」を断念させた魔の手

 

まず、事実関係を整理しておこう。

新潟~極東ロシアを結ぶ日本海横断航路は2007年、新潟経済界が新潟国際海運株式会社を設立し、民間事業としてスタートしたが、傭船を用いたこともあって安定的な運航ができず、自前の船舶を持つ必要に迫られた。自己資本を増強して船舶を購入したいという要請に応じ、新潟県は2015年、新潟国際海運に3億円を出資した。

新潟日報が問題にしたのは、その後の船舶選定、購入契約をめぐる売主とのトラブル、損失に関する、泉田県政の責任だ。

新潟国際海運には以前からナフジェイ・パナマ社という子会社(ペーパーカンパニー)がある。この子会社が2015年8月、韓国の船舶販売会社「セオドン社」と中古フェリーの購入契約を結び、前金として約7,400万円を支払ったのだが、同年10月、フェリーの速度不足が発覚した。

パナマ社が契約違反だとしてフェリーの引き取りを拒否したため、セオドン社は日本海運集会所に仲裁を申し立てた。集会所は今年7月7日、パナマ社に対し、セオドン社に約1億6,000万円を支払うよう命じた。

この支払いを実行すると、前金と合わせ2億3,000万円をこえる損失が出るわけだが、その責任の所在がどこにあるのかについて、新潟日報の報道と県側の説明は大きく食い違う

新潟日報の報道では、県、国際海運、パナマ社が一体的に船の選定作業や契約交渉を進めてきたとしているが、これに対し県は、新潟国際海運とパナマ社から事前に購入契約の報告がなく、契約をめぐるトラブルに県は関与していないと主張する。

新潟日報は今年7月21日、28日、8月2日、4日、9日、11日、23日の紙面などで、この問題を追及する記事を掲載、そのつど、県側は「取材に基づかない一方的な憶測記事だ」などと抗議文を送っている。

パナマ社が購入契約を結んだ中古フェリーは、韓国の修学旅行生ら多数の犠牲者を出したセウォル号の会社(事故後に倒産)がかつて所有していたものらしく、セウォル号のように日本のフェリーを改造したため重量が増し、速度が出なかったらしい。そのことを売り主側が知らないはずはなく、胡散臭さが漂ってくる事案ではある。

が、この稿でそのことに深く立ち入る気はない。つまるところ買主側の事前チェックが甘かったのが最大の問題であり、出資した新潟県の知事にも一定の責任はあるだろう。

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