この記者会見の背後では、激しい駆け引きがあったようだ。翌日の新聞はなぜか全文掲載ではなく会見の抄録のみを掲載した。首相に最も近い政治家の就任会見が抄録というのも奇妙だが、ほとんど全文を掲載しているのに抄録としているのも不思議だった。
だが、よく読めば、その意図は簡単に見抜くことができた。筆者の記者クラブに関する質問だけが抜き取られていたのだ。これは3月の小沢会見でも全く同じだった。
生中継をしていたNHKに至ってはもっと巧妙だった。後日、NHK報道局の幹部がこう筆者に労いの言葉をかけてきたのだ。
「上杉君、鳩山会見での手の上げ下げの運動(挙手のこと)、大変だっただろう」
放送されてもいない内容をなぜ知っているのかと逆に訊ねるとこう続けた。
「それはそうだよ。だって、あの会見では絶対に上杉隆だけには当てないようにとクラブ側で事前に取り決めていたんだから。だから、いくら上げ下げしても無理だったんだよ」
要するにその日の会見では、筆者の記者クラブ問題に関する質問を事前に予想し、NHKニュースの生放送中に間違えても流れないよう、予め「合意」ができていたというのだ。党職員のI氏はそれを忠実に守るために不自然な指名を繰り返していたということになる。
確かに、筆者の質問の頃にはNHKニュースの放送は終わり、大相撲中継に移っていた。
記者クラブのこうした徹底した言論統制は見事の一言に尽きる。
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