蓮舫氏に早くもシラケムード。野田幹事長起用で「民進党は終わった」

 

政策面でも何ら総括がない。北海道5区補選とそれに続く参院選での野党選挙協力は、昨夏の安保法制反対デモの盛り上がりを背景に、共産党の自己犠牲的な問題提起があってそれなりの成果をあげた。そのため、取り敢えず安保法制廃案立憲主義擁護というところを一致点にして政策協定が結ばれたのだが、しかし野党はそれを中心的な争点に押し上げることに失敗した。32の1人区で勝利した11区では、安保と憲法を中心争点にして勝ったところは1つもなく、東北・甲信越の農業県では主に「TPP」、沖縄では「辺野古」、福島や同時に行われた鹿児島県知事選では「原発」など、その地域で切実なテーマだった。

安保が争点になりきらなかったのは、共産党が昨年9月、安保国会終了と同時に参院選共闘を呼びかけたにもかかわらず、民主党内の前原誠司や長島昭久や野田佳彦のような「集団的自衛権容認」派が反対して、共産党などとの共闘合意に達するまでに半年近くを空費したことが致命的だった。そのために、15年安保闘争の市民的エネルギーをそのまま参院選に繋いでいくことができなかった。それを何とか取りまとめて共闘合意まで持っていったのは、主として枝野幸男幹事長の獅子奮迅の努力の賜ではあったが、それにしても時間がかかりすぎた。

他方、野党が勝利した11区で実質的な争点をなしたTPP推進、原発再稼働、辺野古建設推進では、これまたどれをとっても民進党の野田前原らは自民党と同じ立場であり、それらのテーマまで含めたより包括的な、国民の期待に応えうる共闘が実現するのを妨害した。

つまり、安保でも、その他の重要なサブテーマでも、路線が混濁したままの民進党は、11の1人区での勝利にろくに貢献していないどころか足を引っ張りさえした。にもかかわらず、辛うじて共闘の実現にまでこぎ着けたことで生まれた淡い期待のムードに助けられて、同党は壊滅的な大惨敗を免れたのである。

この路線の混濁を切開手術的に整理して、文字通り野党第一党として野党共闘をリードして次の衆院選で安倍政治の流れにストップをかけるための民進党の再生であるはずなのに、その幹事長が自民党野田派の領袖であるとは……。政治的自殺行為である。これで秋雨政局は一段と憂鬱さを増すことになった。

image by: 首相官邸

 

高野孟のTHE JOURNAL』より一部抜粋
著者/高野孟(ジャーナリスト)
早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。
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