【書評】字引は小説より奇なり。舟を編む天才2人の「生きざま」

 

見坊豪紀と山田忠雄、二人の編纂者の情熱と相克の物語は「ケンボー先生と山田先生~辞書に人生を捧げた二人の男~」と題して、2013年4月29日にNHK-BSプレミアムで放送された。そのドキュメンタリー番組の企画・制作過程での取材内容に、新たな証言や検証を加えて構成したのが本書である。日本を代表する二冊の辞書「三省堂国語辞典」「新明解国語辞典」の誕生と進化を追い、この二冊の編纂者である見坊豪紀(国語学者にして稀代の天才辞書編纂者)と山田忠雄(国語学者にして反骨の鬼才辞書編纂者)いう超人の実像を露わにする、まさしくミステリーといっていい組立で、知的興奮を堪能できる好著だ。

ケンボー先生は「ことばは、音もなく変わる」と言い、山田先生は「ことばは不自由な伝達手段である」と言う。「客観」VS「主観」、「短文」VS「長文」、「かがみ」VS「文明批評」、対立しながら互いに存在感を放ち屹立する。二人が残した国語辞典から、何万ということばの中から、二人の関係や心情の手がかりを探し出すという、途方もない思い込みのアプローチ。そして辞書の中から発見した恐るべき事実。「新明解」に載る奇妙な記述の意味とは。まさに「字引は小説より奇なり」が次々と。面白い! というわたしは国語・漢和・古語の辞書を中学生の孫に押しつけ、専らネットに依存するたわけ者だ。

編集長 柴田忠男

 

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