欧米に吹き荒れる金融危機の嵐。ソロスが見捨てた3つの銀行とは

 

そして、もともと破綻が近かった地方銀行のいくつか、「Banca delle Marche」、「Cassa di Risparmio di Ferrara」、「Cassa di Risparmio della Provinincia di Chieti」は、この機に便乗するかのように、公的資金による救済に大きく手を上げはじめました。なせなら、モンテ・パスキ同様にEUとして公的資金を入れることを認めなければ今後国がEU離脱に動くことになりかねませんので、それを人質にとるも同然の行為として、救済を叫びはじめたのです。

また、今月に就任予定の米国のトランプ次期大統領が、「ウォール街改革・消費者保護法」と呼ばれるドッド・フランク法の廃止や新たな金融規制導入の凍結など、大幅な規制緩和かつ厳しい姿勢を打ち出していることなども、EUを考え込ませることになっています。

このドッド・フランク法の廃止により、「大きすぎてつぶせない」巨大金融機関の救済に公的資金が使われることがなくなります。すでに、米国の著名投資家ジョージ・ソロスは、今後のドッド・フランク法の廃止を見込み、「大き過ぎてつぶせない」銀行、「Citigroup」「J.P. Morgan」「Bank of America」の株をすべてて売却しました。このソロスの動きを見る限りにおいて、米国ではこの三行に注意が必要ということが理解できます。

もし、米国だけタガが外れされること(ドッド・フランク法の廃止)になれば、欧州全体の金融機関が出遅れること(大きな処理がいつまでもできないこと)を意味しますし、一方、今回イタリアでルールが壊されれば、さらなるカオスに向かいかねないことも事実です。

現在、モンテ・パスキ破綻処理は飛び火していますが、まだイタリア国内に収まっています。ですが、これがイタリア国内だけに止まる可能性は極めて低く、なぜなら、それがEUという制度だからです。

今年、EUはあらたな危機を迎えます。それは、もはや金融危機に限りません。

image by: Shutterstock

 

takashiro 『高城未来研究所「Future Report」
著者:高城 剛
1964年生まれ。現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。毎週2通に渡るメルマガは、注目ガジェットや海外移住のヒント、マクロビの始め方や読者の質問に懇切丁寧に答えるQ&Aコーナーなど「今知りたいこと」を網羅する。
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