多くの人が学ぶ「英語」を例にします。現在のビジネスはグローバル化しており、英語が必要な仕事は国内にも増えているのは間違いありません。しかし、個々のビジネスパーソンが、実際にそれを必要としているのかは別問題です。
英語を習得するのは膨大な時間がかかります。とくに、「ネイティブみたいに英語ができるようになりたい」と漠然と考えるのであれば、1日のうち、かなりの時間を英語に割かなければならないでしょう。
しかし、一口に英語といっても様々なスキルがあります。たとえば、英語の論文を読み、書く研究者には、会話などのコミュニケーションはそれほど得意ではない人も多いといいます。学術用語を使った文章の構成には一定のルールがあり、読み書きに必要なスキルは限られるからです。
もっと言うと、最初から英語の勉強は捨て、ほかの自分の仕事に関する能力の向上に時間を使ったほうが良いこともあるでしょう。自分が下手な英語を話すより、優秀な通訳を探し、その人との信頼関係を深めることに時間を使ったほうが、目的達成に近づくこともあるかもしれません。
弁護士業界でも、英語の必要性が声高に語られています。企業の海外進出や海外取引が増えているためです。「これからの弁護士は、英語を扱えないようではダメだ」と言われることも多いです。しかし、私は英語の勉強をしていません。英語の勉強で必要となる膨大な時間を考えると、現在、私に必要な実務的な知識をつける時間に投下した方が価値が高い、と考えているためです。
今後、もし多くの弁護士の仕事が英語で行われることになるかもしれません。そうなると、ほとんどの弁護士は英語の勉強に膨大な時間を割くことになるでしょう。その時、私は、英語の必要ないコアな日本語による法律業務の習得に膨大な時間をかけるのではないか、と予想します。
ビジネスにおいて、自己研鑽は必須。しかしその技術や知識が何を目的としているかを問いかけることは忘れてはなりません。限られた時間と自身の適性から、鍛えるべき「筋肉」を見極め、それを徹底して磨いていくことが大切なのだと思います。
今回は、ここまでです。
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