な、なんだこの腰のしびれ。思い当たる原因は何か?

2017.03.06
by gyouza(まぐまぐ編集部)
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腰のしびれは不快なもので、ときに痛みをともないます。

自分以外の人に正確に症状を伝えることも難しく、悩んでしまうこともあります。

今回は、そんな「腰のしびれ」の原因と対処法につい、詳しくご紹介していこうと思います。

「しびれ」の原因は大きく2つにわけられる

「しびれ」の原因の分け方は、さまざまな分類法があります。

ただ細かく分類していくと専門的で分かりにくいものになってしまいます。ここでは、腰に注目して「しびれの原因」を大きく2つにわけてみていきます。

ひとつは神経の障害による「しびれ」、これは「神経障害性のしびれ」といわれるものです。

もうひとつは神経の障害でない病気やケガでおこる「しびれ」で、「非神経障害性のしびれ」とされるものです。

ひとつずつ詳しくみていきましょう。

1.神経の障害が原因となる腰の「しびれ」

神経の障害が原因となる「しびれ」とは、神経が圧迫されたり、傷ついたりと直接ダメージを受けてしまうことおこるものです。

ダメージを受けた場所によって以下の3つに分けることができます。

脳が原因のもの

脳の病気によって、腰のしびれをおこすことがあります。たとえば、脳血管障害などが代表的です。

脳の神経が障害されると腰を含む左右の片側の痛み・しびれ、手足の麻痺(しびれや無感覚)などがみられることがあります。

さらに言葉の障害や視覚の障害などが複雑にみられる場合もあります。

障害を受けた脳の場所によって、症状の現れ方が違います。

脊髄・神経根が原因のもの

脊髄(せきずい)というのは、背骨のなかにある神経の束(たば)のことです。

脳と脊髄は、神経の中枢部とされるので、中枢神経とよばれることもあります。

また神経根(しんけいこん)とは、脊髄からからだ全体に向かって神経が伸びはじめる根元の部分のことです。

背骨に何らかの問題があると、根元の部分で神経が圧迫されたり傷ついたりして「しびれ」や「痛み」を生じることがあります。さらに筋力の低下、排尿や排便の障害をともなう場合もあります。

有名な病気として、腰の椎間板ヘルニア、あるいは腰の脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)などがあります。

末梢神経が原因のもの

末梢神経(まっしょうしんけい)とは、脳や脊髄を中枢神経とよぶのに対して、からだのいろいろな場所に分布する神経の末端部のことをいいます。

脳や脊髄を電気の発電所や電信柱とたとえれば、末梢神経は各家庭に伸びている電線のイメージです。

末梢神経がダメージを受けると、やはり痛み・しびれといった症状があらわれます。末梢神経の障害をおこすものに、毒物・アルコールなどの中毒、免疫の異常、糖尿病などがあります。

しびれ・マヒなどの症状が、手袋や靴下を着けるところに出現しやすいことから「手袋靴下型の神経障害」ともいわれます。しかし、なかには腰や背中、お尻などに「しびれ」を感じる人もいます。

そもそも神経とは、細長い形をしていて感覚や運動に関わる情報のやりとりをする細胞です。からだのあらゆる場所に網の目のように張り巡らされています。

そして神経が情報を伝える手段として使っているのが「電気」です。

神経は、電気を使うことで素早い情報のやりとりをします。細長い神経の形状と電気を用いるという特性から、神経は電線に例えられます。

からだが電気にふれると「しびれ」ます。

神経にトラブルがあれば、「しびれ」という症状がおこるのは、何となくイメージできるのではないでしょうか。

2.神経の障害以外のものが原因となる「しびれ」

神経が直接傷ついたりするのではなく、ほかの病気によって痛み・しびれがおこる場合があります。

たとえば、血流の障害、筋肉の障害、あるいは内臓の病気といったものでおこるものです。

そのほかにも精神的なストレスが原因でおこる「心因性のしびれ」というものもあります。

腰の場合に、神経の障害以外のものが原因となる「しびれ」として訴えられるものに、「坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)」があります。

坐骨神経痛は、腰だけでなくお尻、太もも、ふくらはぎ、すね、足部に「しびれ」を感じ、多くは痛みをともないます。

そのため、「痛い」という感覚と「しびれ」という感覚をはっきりと区別できない場合もあります。坐骨神経痛は、腰から下の部分に感じる「しびれ」として頻度が高く、「しびれ」という症状の約20%は、坐骨神経痛によるものともいわれます。

では坐骨神経痛というのは、いったい何でしょうか。

坐骨神経痛は、坐骨神経が何らかの原因で圧迫されたりして痛み・しびれが出る状態のことをいいます。坐骨神経痛という病気があると認識されていることもありますが、そうではありません。

坐骨神経痛は、腰やお尻、脚に痛み・しびれなどの症状がある状態の総称です。

風邪が原因で、くしゃみ・せき・鼻みずなどの症状がでるのと同じです。坐骨神経痛という症状が出るには、腰回り〜お尻の筋肉の問題、背骨の問題、骨盤の関節の問題などが原因となっていることが考えられます。

また、坐骨神経痛の原因がはっきりと特定できない場合もあります。

要注意!「しびれ」の対応は診断ありき

ここまで「しびれ」の原因についてみてきました。

「しびれ」がおこる原因はかなり複雑なため、まずは専門医による診断が重要であることを念頭にしましょう。

「しびれ」は、とてもあいまいな症状です。

はっきりとした原因をつかむことは、専門家であっても頭を抱えてしまうことがあります。自分で原因を特定するというのは難しいものです。

なかには、時間の経過とともに自然治癒する場合もあります。しかし「しびれ」には思わぬ病気が隠れていることもあります。

その理由として、「しびれ」という症状には神経や血管、筋肉の症状などが混在していることも多いからです。

また内臓の病気が隠れていることもあります。

たとえば、十二指腸や肝臓、腎臓、膵臓、子宮などの病気によって、腰や背中〜わき腹などに痛み・しびれを感じることもあります。

とくに、心当たりもなく突然出てきた症状や、排尿や排便の症状(尿もれ、尿が出ない、失禁するなど)の症状がでているときは、緊急性が高いものとなります。

ちなみに「しびれ」を専門としているのは、整形外科、神経内科・外科、ペインクリニックなどがあります。近くにこのような診療科の病院がない場合には、内科を受診する方法もあります。

内科は、あらゆる病気の総合窓口としてのはたらきがあります。

専門外の病気であれば、必要な診療科を提案したり、次の病院に紹介状を作成してくれたりします。大学病院などの大きな病院にかかるとき、紹介状があれば優先的に予約ができたり、受診時の手間などが省けるなどのメリットがあります。

セルフケアできる腰のしびれと対処法

セルフケアできる腰の「しびれ」の対処法としてストレッチがあります。

注意しておきたいのは、「腰のしびれに関してセルフケアで対処するには限界がある」ということ。セルフケアとしてのストレッチをする前には以下の場合に限られます。

・きちんと診断を受けて原因がはっきりとしない場合
・専門家に運動の許可をもらっている場合
・専門家による指導を受けている場合

上記を確認したうえで、腰のしびれに対して改善が期待できるストレッチを2つご紹介します。

お尻のストレッチ

お尻の筋肉のなかでも「梨状筋(りじょうきん)」という筋肉をターゲットにします。

この筋肉の下をくぐるように坐骨神経が伸びています。梨状筋が硬くなると、坐骨神経が圧迫され、腰や足に痛み・しびれが出ることがあります。

その筋肉の柔軟性を改善させるのが目的です。

・Step1
仰向けで床に横になります。右足を胸に引き寄せます。右膝を右手で持ち、左手は右足首を待ちます。

・Step2

ヒザを右肩の方へ引き上げます。※左のおしりが床から浮かないようにします。

20~30秒を目安に左右ともおこないます。終わったら両脚をのばし仰向けの姿勢にもどります。

次にStep3に進みます。
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・Step3
右の股関節とひざ関節を90度になるように曲げて、足の裏は床につけた状態にして片膝を立てておきます。

・Step4
右足のかかとを左ヒザの上へ置きます。左手で右ももの外側を持ち、左肩の方へ引きます。※右のおしりが床から浮きすぎないように気を付けます。

・Step5
20~30秒を目安に左右ともおこないます。

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太もも前面のストレッチ

太もも前面のストレッチでターゲットとするのは、太ももの付け根にある「腸腰筋(ちょうようきん)」という筋肉です。

腸腰筋は、太ももを持ち上げる筋肉です。太ももの前面で腰の痛みがおこるのは意外に思われるかもしれません。しかし痛みやしびれには、関連痛(かれんつう)というものがあります。

関連痛とは、痛みやしびれの原因が、ほかの場所にまで及んでしまうことをいいます。

たとえば、心臓病で肩や背中に痛みを感じるのも関連痛のひとつです。

腸腰筋が柔軟性を失うと、背中、腰、お尻、太ももなどに痛み・しびれをおこすことがあると考えられています。

・Step1
四つん這いになります。

・Step2 
右の膝を前に出し、左の脚は後ろに伸ばします。

※このとき右足は正座のように、(1)スネを床につけていても、あるいは(2)足の裏を床につけて踏み出すようにして膝を立てた姿勢でもかまいません〔写真では(1)を採用しています〕。左の脚の太ももの付け根前面が伸びるのを感じてください。
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・Step3
Step2の状態で、ゆっくりと息を吸い、次にゆっくりと息を吐き脱力します。

・Step4
20~30秒を目安に左右ともおこないます。

「しびれ」という症状は主観的で、あいまいなもの

「しびれ」という症状は、とても主観的、あいまいなものです。

「ジンジン」「ビリビリ」などの自覚的な感覚で表現され、人によっては「ふるえ」や「痛み」も「しびれ」として訴えられることもあります。 伝え方がぼんやりしていると、診断が長引くことにもつながります。

難しいかもしれませんが、「しびれ」の内容は具体的に伝えることも大切です。

たとえば「正座のときのピリピリする感じ」「ムズムズして、虫が這うようなくすぐったい感じ」「剣山の上を歩いている様な感じ」「足が冷えるような感じ」といった具合です。

そして「しびれ」がからだの何処にあるのかを伝えます。

腰、背中の上の部分、手足の「どの部位に」ということを具体的に伝えるようにします。これによって診断がより正確になります。

またその他、しびれのほかに症状があれば、それも貴重な診断の材料になります。

【参考文献】
*嶋田智明・大峯三郎:これだけは知っておきたい腰痛の病態とその理学療法アプローチ(実践Mook理学療法プラクティス), 文光堂, 2008
*日本整形外科学会・日本腰痛学会(監):腰痛診療ガイドライン 2012, 南江堂, 2012
*厚生労働省資料2011年7月25日「治療と職業生活の両立等の支援手法の開発」のための事業(疾患案件名:腰痛)(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000023wrx-att/2r98520000023x67.pdf 2017年2月10日閲覧)

 

執筆:森 ジュンヤ(理学療法士)
 

<執筆者プロフィール>
森 ジュンヤ(もり・じゅんや)
理学療法士国家資格取得。急性期総合病院、回復期リハビリ専門病院、訪問看護ステーションにて臨床経験を経る(現在10年目)。専門分野は保健衛生分野。現在は医療関連記事、動物臨床医学、保健衛生学についての執筆を行う。

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記事提供:Mocosuku(もこすく)

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