捕虜のドイツ兵たちを感涙させた徳島県「板東俘虜収容所」の奇跡

 

「我が友に…!」

元気づけられたドイツ人たちは、板東の人々への感謝にベートーベンの第9交響曲を演奏する事にした。日本各地のドイツ関連施設から楽器を取り寄せ、総勢45名での演奏である。これが日本での第9の初演となる。

演奏の前に、青島総督だったハインリッヒ少将が挨拶を述べた。

青島での戦闘に敗れ、われわれは捕虜となって、この地へ参りました。私はいま、誇りをもって、この地を去ることができます。それは松江所長のおかげです。

 

松江所長は、私の人生で、もっともつらい時期に、勇気と力を与えてくれた。勇気と力――。我々は、ベートーベンのフロイデ(歓喜)を感謝のしるしとして、皆さんにプレゼントしたい。世界のどこに、バンドーのようなラーゲル(収容所)があったか! 世界のどこに、松江のようなラーゲル・コマンダー(収容所長)が…

感極まって、ハインリッヒが声を詰まらせた。会場は水を打ったように静まりかえった。ハインリッヒは松江のもとに歩み寄って、愛用のステッキを差し出した。「我が友に…!

二人を包んで、嵐のような拍手が沸き起こった。

文責:伊勢雅臣

image by: Shutterstock.comWikimedia Commons

 

伊勢雅臣この著者の記事一覧

購読者数4万3,000人、創刊18年のメールマガジン『Japan On the Globe 国際派日本人養成講座』発行者。国際社会で日本を背負って活躍できる人材の育成を目指す。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 Japan on the Globe-国際派日本人養成講座 』

【著者】 伊勢雅臣 【発行周期】 週刊

print
いま読まれてます

  • 捕虜のドイツ兵たちを感涙させた徳島県「板東俘虜収容所」の奇跡
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け