台湾人と日本人とがともに過ごした日々
台湾での郷土史ブームは、台湾人としてのアイデンティティを求める心とつながっているように思える。「自分たちは、大陸の中国人とは違う。台湾に生まれ、育ってきた台湾人だ」という意識が、「自分探し」の旅としての郷土史ブームの原動力になっているのではないか。
そして、台湾各地に残る歴史遺産を訪ねてみれば、そこかしこに見つかるのが、1895(明治28)年から大東亜戦争後の1945(昭和20)年までの半世紀の日本統治時代のものである。
台湾の若い世代にとって、この時代の遺産を辿ることは、自分たちの祖父母の生きた姿を思い出すことなのだろう。
そして、そこには我々日本人の祖父母の足跡も残っている。かつて台湾人と日本人とが、この地でともに過ごした日々があった。ともに力を合わせて、鉄道を敷き、橋梁を建設し、水力発電所を設け、灌漑水路を堀り、診療所で人々の健康を守った。
「日本帝国主義による植民地支配」などという空虚な概念では掬いきれない、喜びや悲しみに満ちたそれぞれの人生があったのである。
文責:伊勢雅臣
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