「AIIB事件」を振り返る
アメリカの現状を理解したところで、「AIIB事件」について振り返ってみましょう。私の見解は、「アメリカと特別な関係」と呼ばれたイギリスが、先頭を切ってアメリカを裏切り、「雪崩現象が起こった」でした。もちろん根拠もあります。ロイター2015年3月24日付をみてみましょう。
欧州諸国は今月、いずれも先発者利益を得ようとAIIBへの参加を表明。米国の懸念に対抗したかたちとなった。いち早く参加を表明した英国のオズボーン財務相は議会で行った演説で、AIIBが英国にもたらす事業機会を強調した。「われわれは、西側の主要国として初めてAIIBの創設メンバーに加わることを決定した。新たな国際機関の創設の場に存在すべきだと考えたからだ」と述べた。この演説の前には、ルー米財務長官が電話で参加を控えるようオズボーン財務相に求めていた。
アメリカが「AIIBに参加するな」と要求し、イギリスは、それを無視したことがはっきりわかります。これで、他の国々は、「アメリカと世界一仲良しのイギリスがAIIBに入るのなら、私たちも許されるであろう」と判断します。
米国の緊密な同盟国である英国のこの決定を受け、他国の参加ラッシュが始まった。英国の「抜け駆け」を不満とする独仏伊も相次ぎ参加を表明し、ルクセンブルクとスイスも素早く続いた。
(同前)
中国は、大敗北を喫したアメリカを笑います。
中国国営の新華社は論評で「ドイツ、フランス、イタリア、そして主要7カ国(G7)のメンバーで米国の長年の同盟国でもある英国の加盟は、米国が掲げる『反AIIB』の動きに決定的な亀裂を生じさせた」とし、「負け惜しみは米国を孤立させ、偽善的にみせる」と批判した。
「負け惜しみはアメリカを孤立させ、偽善的にみせる」そうです。
以上が、Sさまのおたよりへの回答になります。私もHSBCストラテジストの見解が、「正解であればいいが…」とは思います。しかし、素直に、「アメリカも弱くなったな…」ということではないでしょうか? 繰り返しになりますが、だからトランプさんは、「アメリカを、『再び』偉大にする!」と言うのです。いま偉大であれば、『再び』とは言わないはずです。
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