【書評】尖閣・漁船体当たり事件を「予言」した日本人アナリスト

 

「世界のすべての情報は『操作』されている」

前節の「国益のために、国家はあらゆるウソをつく」というのが、クレムリンメソッドの第7の原理だが、それに続く第8の原理が「世界のすべての情報は操作されている」だ。

世界にはいろいろな「情報ピラミッド」があり、その国の国民や世界に対して、都合のよい情報を流すというプロパガンダを行っている。

「米英情報ピラミッド」では、「米英に都合のよい情報」が流される。「中共情報ピラミッド」では、「中国共産党政府に都合のよい情報」が流される。「クレムリン情報ピラミッド」では、「ロシア政府に都合のよい情報」が流される。

日本人は「米英情報ピラミッド」しか知らないので、そのプロパガンダに騙されやすい。しかし、たとえば、「クレムリン情報ピラミッド」がどんな情報を流しているか調べてみれば、両者の食い違いから、世界の実態がよりよく見えてくる。

たとえば2014年3月のロシアによるクリミア併合は、欧米そして日本では「ウクライナ領クリミア自治共和国とセヴァストポリ市を、ロシアが武力を背景に併合した国際法違反」と言われている。

しかし、クレムリン情報ピラミッドでは「クリミアは1783年から1954年までロシアに属していたロシア固有の領土」であり、「クリミアで住民投票が実施され、97%がロシアへの編入を指示したから」と一蹴する。

そして「欧米は2008年、コソボ自治州がセルビアから一方的に独立するのを支持したではないか? コソボが合法なら、なぜクリミアは違法なのか?」と反論する。

こうした二つの対立する「情報ピラミッド」を比較すれば、その矛盾から、どちらが嘘をついているか、見えてくる。これが北野氏の強みであろう。

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