【書評】尖閣・漁船体当たり事件を「予言」した日本人アナリスト

 

「世界の『出来事』は、国の戦略によって『仕組まれる』」

「中共情報ピラミッド」から流されているのが、「日本の軍国主義復活」「日本は第二次大戦の結果を覆そうとしている」「日本は中国から釣魚諸島(尖閣諸島)を盗んだ」などというプロパガンダだ。北野氏は次のようなロシアからの報道を紹介している。

中国の著名な専門家は、中国と同様、日本と領土問題を抱えるロシアと韓国に対し、反日統一共同戦線を組むことを呼びかけた。

(中略)

郭氏(上記の専門家)は対日同盟を組んでいた米国、ソ連、英国、中国が採択した一連の国際的宣言では、第二次大戦後、敗戦国日本の領土は北海道、本州、四国、九州4島に限定されており、こうした理由で日本は南クリル諸島、トクト(竹島)、釣魚諸島(尖閣諸島)のみならず、沖縄をも要求してはならないとの考えを示した。

中国が尖閣諸島の領有権を主張し始めたのは1971年であり、第2次大戦とはまったく関係がないので、上記の主張は完全な嘘である。おそらく言っている本人も、そんな事は百も承知だろう。知っていながら、平然と嘘を流すのがプロパガンダである。

しかも、中国は尖閣諸島だけでなく、沖縄への野心を持っていることをこの発言は示している。尖閣と沖縄を中国が握れば、中国海軍は太平洋に自由に侵出できるようになり、米軍はグアムまで後退して、西太平洋は「中国の海」となる。

「中国の海」に浮かぶ日本列島は、資源輸入のシーレーンを支配されて、中国の属国とならざるをえない。中国は日本の富と技術を自国のために使えるようになる。そうすれば、アメリカにも十分対抗できる覇権を確立できるのである。

世界の出来事は、国の戦略によって仕組まれる」とは、クレムリン・メソッドの第9の原理である。中国漁船体当たり事件も中国の太平洋侵出という戦略の一環である。

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