なぜロシア地下鉄テロは起きたのか。現地在住邦人が内情レポート

 

麻薬を売ってリッチになることを夢見るタジク人

私がいつも行く洗車場では、中央アジア・タジキスタンの人がたくさん働いています。私は、ある男性に、「モスクワでの生活どう?」と聞いてみました。すると、「タジキスタンには仕事がないからモスクワにきたけど、全然楽じゃないね。洗車場で安月給長時間労働でこき使われて…」(それでも、彼は、マジメに洗車してくれます。モスクワにももちろん「自動洗車」はありますが、車の中まできれいにしたいときは、「人力」の洗車に行きます)。

その後、彼は非常に興味深いことをいいました。

麻薬の売買しているタジク人はみんなリッチに暮らしているよ。俺もよく誘われるんだけど、アラーの教えに反していると思うから断ってんだ」

ロシアで流通している麻薬は、アフガニスタンから中央アジアを経由して入ってくるそうです。私は、「誘惑に負ける人もいるだろうな~」と思いました。

過酷、低賃金、長時間労働に嫌気がさし、一部の男性は、麻薬の売買に走る。一部の女性は、売春に走る。これは、どこの国でも同じです。日本だって、外国人を入れてこき使っていたら、そうなります。

サッカー敗戦の「うさばらしサンドバック」にされるキルギス人

テロがらみで思い出したことがもう一つあります。もうだいぶ前になりますが、テレビを見ていたら、キルギスの駐ロシア大使が出ていました。

なんでも、サッカーの試合で自分の応援するチームが負けた。すると、一部のサッカーファンは、道路の清掃をしているキルギス人を殴ったり蹴ったりして、「うさばらし」をするというのです。その場には、ロシアのサッカー協会のお偉いさんもいたのですが、そういう現象があることを認めました。

皆さん、こういう状況をイメージしてみてください。家族を養うために外国に来て、スタジアムのまわりの清掃をしていた。そしたらアグレッシブなサッカーファンが複数やってきて理由なく暴行を加えられる。しかも、何度も何度も、同じことが繰り返される。彼ら犯人が捕まることはない。このキルギス人の憤りは、いかばかりでしょうか? この彼が、ISから、「一緒に復讐しよう!と勧誘されたら入りたくならないでしょうか?

誤解のないように書きますが、ほとんどのロシア人はいい人です。そして、ほとんどの中央アジア人もいい人です。しかし、ごく一部の人の対立が、やがて「民族間の対立」に発展していく。そういうことなのです。

print
いま読まれてます

  • なぜロシア地下鉄テロは起きたのか。現地在住邦人が内情レポート
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け