日本語に欠かせないオノマトペ、実は古事記にも登場していた

 

かように日本語にはオノマトペが多いのだが、母語話者の私たちはそれを自在に使いこなしている。 しかし、日本語を学習している人や翻訳家には大きな障壁になっているようである。相当に日本語がうまい外国人にもオノマトペはやっかいなもののようだ。また、日本文のオノマトペによる情感豊かな表現も、翻訳家泣かせ、訳もつい平板な文章に落ち着かざる得ないことも。

先述の「擬音・擬態語辞典」に載っている話しだが――、日本語の達者な留学生がお腹が痛くて医者へ行った。先生に、「しくしく痛むの? きりきり痛むの?と聞かれてとても困ったと訴える。「しくしく」と「きりきり」の意味の違いが全くわからず困ったというわけである。例えば、雨の降り方の表現でも、ポツポツ、パラパラ、シトシト、ザンザン、ジャンジャン、ザーザー、など実に多様である。日本語のオノマトペはわからないといわれる所以である。

ところでオノマトペは音象徴(おんしょうちょう=sound symbolism)語であるという。音象徴とは、オノマトペの「それらしさ」を表現するもの、音や状態を言語音によって表現すること。 普遍的な音象徴と個別(言語的)音象徴があるというが、何度読んでもこの概念がどうも良くわからない。

普遍的な音象徴として、a・i・u・e・oの母音の相違で意味が違うという例がある。例えばハ行、ぱらぱら、びりびり、ぷるぷる、ぼろぼろ。雨が、ぱらぱら降って来たという。この「ぱらぱら」はまばらな状態、粗である。「ぴりぴり」は、とげとげしい雰囲気。またトウガラシの辛さのように鋭い感じや張り詰めた緊張感。「ぷるぷる」は、弾力あるもの、例えばゼリーやプリン、小動物が細かく震える様子。「ぽろぽろ」は涙をぽろぽろこぼすなど。「ぴりぴり」に比べ何か丸みを帯び柔らかく中間的である。

個別言語的な音象徴では、清音・濁音・半濁音で意味の対立が見られる。かさかさ/がさがさ、かたかた/がたがた、きらきら/ぎらぎら、さらさら/ざらざら、とくとく/どくどくなど。元来、日本語では濁音は、「悪いイメージ」として使われてきた。また、やまとことばには濁音で始まる言葉はなかったという。というわけかサラサラとザラザラの例一つとっても、濁音のオノマトペ、多分に悪玉的、悪いイメージがついて回る。

日本語のオノマトペは実に多種多様でかつ、似たようなものがいくつからある例も多い。例えば、ニコニコ/ニッコリ/ニコッ/ニコリ。これらをケースケースで微妙に使い分けている。だから場面によっては使い方がふさわしくない例も出て来る場合も。

これも上の『擬音・擬態語辞典』によれば、「にこにこ」は、微笑みが反復されたり長く続いたりするのに対し、「にこ」「にこっ」「にこり」は微笑みが一回的で短時間である時に使う。また、「にこり」は声を出さずに、うれしそうな微笑を一回浮かべる様子。「にっこり」は「にこり」より笑顔が鮮明で、その分、うれしさの程度が大きい、と出ている。「彼女は金メダルを手にニッコリしながら観客席に愛想を振りまいた」。

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