「同じ轍」は踏むな。東芝の大失敗に学んだ国内大企業のM&A事情

 

海外企業の買収となると数百億円、巨額なものになれば数千億円にもなる。成功すれば一挙に売り上げ、利益も拡大するが、リスクがあり高値づかみになる懸念も大きい。東芝の場合、ウェスチングハウス(WH)の関連会社も買収の中に入っていたため、その関連会社の不良債権が莫大で東芝は決算の見通しが立たなくなった

やむなく海外原発製造から撤退することを決め、原発と並ぶ経営再建の柱だった半導体事業も売却する方向で検討している。そうしないと過剰債務になり決算が出来なくなるからだ。それでも監査法人は決算を適正と判断せず「意見不表明」とした。このままではあの名門巨大企業の東芝が上場廃止になる可能性も出てきたのだ。

日本の企業は、バブル期にため込んだ内部留保金を沢山もっている。昔ならその資金を使って技術や研究開発で消費者の気持ちを揺さぶる新製品を作り、次なる成長に向けて投資や需要の掘りおこしに邁進したものだ。ところが今や、消費者が買いたいと関心を引く製品がないとみたのか、国内需要の開拓や新しい輸出製品の開発に熱心でない企業が多い。

かといって資金をそのまま持っていては「もっと有効に使うか、株主に還元すべきだ」と株主に言われる。また巨額の内部留保をただ所有しているだけでは、この低金利マイナス金利時代では資金運用の向け先もない。そこで目を向けたのがM&Aだった。

海外には魅力的な投資物件があるようにみえたし、国内市場は人口減少、少子高齢化でもはや成長は期待できないとみて海外へと目を向けたのだ。インフラ、エネルギー、住宅、鉄道、都市開発、流通網整備など、日本が高度成長期に猛然と突き進んだ分野へ海外投資、M&Aへと余剰資金を注ぎ込んだ。しかし海外投資M&Aなどに慣れていない企業の失敗例も多かった。

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