実際、今年に入って北朝鮮危機が高まって以来、中国が南シナ海で何をしているかは、もはやアメリカやアジア諸国の関心の焦点では無くなっている。そういう意味で北朝鮮の核の脅威は、中国が自らの覇権主義戦略をひそかに推進していくための「隠れみの」にもなっている。
北朝鮮の存在と脅威が中国にとってそれほど有用なものであるなら、習近平政権は決して、北朝鮮問題の完全解決に本腰を入れようとしないであろう。実際、この原稿を書いている12日現在まで、中国が問題解決のために奔走した痕跡はまったくないし、北朝鮮の核放棄に向かって何かの決定的な解決策を打ち出したこともない。
中国の王毅外相に至っては、「解決の鍵は中国の手にはない」と強調する一方、「北朝鮮危機が制御不能となる可能性がある」と、まるで傍観者であるかのような振る舞いに徹している。
つまり中国は、本気で北朝鮮問題を何とかしようとは考えていない。それもそのはず、北朝鮮が「問題」であって「脅威」であるからこそ、中国にとって利用価値があるからである。
北朝鮮問題が完全解決された暁には、中国は一気に、対米外交における最も有力なカードと、自らの拡大戦略推進の「隠れみの」を失うのである。したがって習近平政権は、トランプ大統領に協力する素ぶりで「努力」しているかのように見せているが、石油供給の完全停止など、思い切った北朝鮮制御の「必殺の剣」は決して抜かない。