ひっそり値上げ。缶ビールは「安売り規制」でいくらになったのか?

 

改正酒税法は議員連盟「街の酒屋さんを守る国会議員の会が改正案を国会に提出したことで成立しました。スーパーやディスカウントストアの安売り攻勢で街の酒屋は苦境に立たされていました。そこで、街の酒屋が集まる団体が同議員連盟に働きかけました。そして、酒の安売りに規制がかかるようになったのです。

改正酒税法により価格は上昇することが予想されます。メーカーとしてはリベートを減らす大義を得ることができ、安売り体質から脱却できるため基本的には歓迎しています。一方、消費者は従来より高い価格で買わざるを得ず、大手スーパーなどは集客の目玉を失い、リベート収入が減るため喜ぶことはできません。

長期的には、消費者のアルコール離れにより市場が縮小し街の酒屋やメーカーも苦境に立たされる恐れがあります。街の酒屋の場合、競合はスーパーやディスカウントストアだけではありません。コンビニエンスストアが大きく立ちはだかると考えられます。

コンビニはもともと割引が少ないため改正酒税法の直接的な影響はほとんどないとみられます。スーパーなどの安売りされたお酒を目当てにしていた消費者がコンビニに流れることが考えられるため、コンビニにとってはむしろ追い風となりそうです。街の酒屋とコンビニとでは価格に大きな差はないため、利便性やブランド力の観点から街の酒屋よりもコンビニに多くが流れると考えられます。

価格が高くなったことにより消費者のアルコール離れが進めばメーカーにとっても大きな打撃でしょう。改正酒税法の影響がないアルコールでカバーするにしても、影響は小さくないと考えます。近年増加傾向にある「家飲み需要に水を差すかたちになるからです。

サントリーは今年4月に家飲みに関する消費者調査の結果を「RTDに関する消費者飲用実態調査 サントリーRTDレポート2017」で公表しているのですが、家飲みが増えたと答えた人が24.4%にものぼり、減ったと答えた人を約9ポイント上回るという結果が示されています。家飲みは増加傾向にあるとしています。

また、家飲みはビール系飲料(ビール、発泡酒、第三のビール)とRTD(Ready to Drink)と呼ばれるそのまますぐ飲める缶チューハイなどの低アルコール飲料で多くを占めているのですが、2016年のRTD市場は9年連続で前年を超えて過去最大の市場規模に成長し、家飲み市場を支えていることが示されています。

家飲み市場は拡大しています。しかし、メーカーのリベートはビールや缶チューハイに手厚いとされるため、酒の安売り規制により家飲み市場が縮小してしまう恐れがあります。さらに、ビール系飲料の販売数量が減少していることも好ましくない状況です。

キリンの「DATA BOOK 2015」によると、国内大手5社のビール系飲料の課税数量は2006年には約630万キロリットルありましたが、2015年には537万キロリットルにまで減少しました。この10年間で約90万キロリットル減少し、年間ベースで一貫して減少しています。

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