そもそも「ブラック企業」という概念は、いつ頃生まれたのか?

 

2.パンピーのリーマン

大学への進学率が上がり、スーツがユニフォーム化するにつれ、サラリーマンはエリートではなく、普通の人になっていった。
パンピー(一般ピープル)のリーマン誕生である。

経済成長と共に、社会は清潔になり、均一になっていった。社会的規範が明確になり、同調圧力が強くなっていった。

バブル崩壊と共に、経済成長は止まった。そして、リストラが起こり、終身雇用も崩壊していった。新卒の採用を見合わせる企業が増え、就職氷河期を迎えた。

かつての多様な社会が残っていれば、サラリーマン以外の道も簡単に選べただろう。しかし、清潔で均一な社会において、選択肢は少ない。もし、社会のレールから外れてしまえば、犯罪に手を染めるしかない。

リストラを経験したサラリーマン、就職氷河期を経験した若者、非正規雇用で働く若者は、かつてのような企業への信頼感を持つことができなくなった。会社は人生をかける対象ではない。生活のために必要な収入を得る場である。仕事人間が減少し、自分の趣味に生き甲斐を見出す人が増えるのも当然である。

「ワークライフバランス」という概念が生れたのは、会社観、仕事観の変化によるものといえるだろう。

3.ブラック企業という概念

私が勤めていたアパレル企業は、現在の基準でいえばブラック企業だった。毎日残業するのが当たり前であり、残業手当もなかった。

現在との違いは、全員正社員だったことだ。社員の格差はなかった。毎日残業し、その後で飲みに行って、午前様で帰宅するという人は珍しくなかった。

「ブラック企業」という概念が生れたのは、非正規雇用が増えてからだ。仕事の内容は正社員と同じでも、身分の格差で、給料には大きな格差がある。企業への忠誠心が生じるはずもなく、生活のために労働を切り売りしている感じだ。

そんな境遇で、残業手当が支払われない、不当なノルマを与えられる、ということになれば、会社への不満が爆発するのも当然だろう。

正社員の意識も変わっている。会社との関係は雇用契約によるものであり、契約を遵守しない企業はブラック企業と認識される。

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